東京メトロ・有楽町線の和光市駅。この周辺は「東京にかなり近い埼玉」という立地から、最近人気の住宅地だ。
7月20日午後2時半過ぎ、同駅南口から朝霞方面に向う線路脇の約500メートルの細道を、多くの人が歩いている。連日続く猛暑のなか、皆が目指すのは、本田技研工業だ。汗を拭き拭き、息を切らしながら「なんでここでやるんだ? 青山でいいんじゃないの?」。そんな会話が漏れてくる。
午後3時、同社1階の「Honda 和光ビル1Fホール」。300人近い報道陣が待ち構えるなか、伊東孝紳社長、近藤広一副社長が舞台正面に座った。事前に郵送されてきた案内状には「社長会見」と書かれているだけだ。
ホンダの「次の10年の方向性」を語った伊東孝紳社長
Photo:Natsuki Sakai/アフロ
Photo:Natsuki Sakai/アフロ
会見の冒頭、伊東社長はこう挨拶した。
「昨年6月社長就任してから1年が経ちました。この1年は主に、経済危機の影響を最小限にすること、企業体質をより強化することに取り組んできました。これからは、新たな成長戦略を描き、それを実行する段階に入りました。この数年で、ホンダを取り巻く環境は大きく変化しました。
地球規模での環境意識が高まり、また一昨年の経済危機以降、世界経済の構造変化が顕著になりました。これらの変化によりまして、世界中の四輪車市場で小型車志向が一気に進みました。ホンダの次の成長発展には、こうした時代の変化に迅速に対応することが必須だと考えています」