Photo by Masato Kato
ソフトバンクグループが米オープンAIへの5兆円を超える巨額出資を完了し、全米でAI(人工知能)インフラを建設する「スターゲート計画」を加速する体制を整えた。孫正義会長兼社長のAI「全賭け」の戦略に勝算はあるか。特集『AI産業戦争 米中覇権に呑まれる日本』の#4では、孫氏の野心を財務で支えてきた後藤芳光専務執行役員CFO(最高財務責任者)に、巨額投資とAIインフラ構築計画の全貌を聞いた。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
エヌビディア株よりAIインフラ投資を優先
オープンAIとアームが「二大エンジン」に
――米オープンAIへの累計投資額は347億ドル(約5.5兆円)に上ります。この他、米半導体設計企業アンペア・コンピューティングやスイスABBのロボティクス事業の買収、米インテルへの出資などを含めれば、この1年間のAI投資の規模は過去最大になるのでは。
そのための資金は十分に手当てしています。確かに金額は過去に例を見ないレベルかもしれませんが、金額の規模そのものにはあまり意味はないですね。
私は2000年にソフトバンクへ入社して以来、大型投資をいろいろ経験しましたが、本当にきつかったのは二つあります。一つは01年に始めたヤフーBB事業で、もう一つが06年の英ボーダフォン日本法人の買収です。
2000年代初頭のネットバブル崩壊で、当時の企業価値はほぼゼロに近い水準まで落ち込んだ。当時の会社の規模からすれば、とんでもない投資でした。それに比べれば今の投資は金額レベルでは最大かもしれませんが、企業体力やバランスシートの強さは当時とは比べものにならないので、全く問題はありません。
われわれの(保有株から借金を引いた)ネット・アセット・バリューは10兆円、20兆円、30兆円と着実に拡大してきたので、借金が増えても、資産価値の成長がそれを上回っている限り、財務の健全性を保てます。
――保有していた米エヌビディア株を全て売却しました。孫正義会長兼社長は「泣く泣く売った」と言っていましたが、どんな判断があったのでしょうか。
孫さんがエヌビディア株を手放したくない気持ちは私もよく理解していますが、攻めの経営を進める中では、マイノリティー出資のエヌビディア株を持ち続けるよりも、オープンAIへの大型投資や、これからも拡大していくAIのインフラビジネスに投じる原資を確保する必要がありました。
孫さんが途方もないチャレンジをしようとするときには、「孫さん、売りたくないものでも売らなければいけませんよ」という議論をします。資産の入れ替えは常に必要なので、株式売却やファイナンスについては、その都度孫さんと議論して意思決定をしています。
――オープンAI株への大型投資で、ソフトバンクグループ(SBG)にとっては、傘下の英アーム・ホールディングスに並ぶ大きな資産になりそうです。
アームは約90%を保有する子会社で、オープンAIは11%の少数株主なので、やや違う面はあるのですが、われわれのアセットバリューをけん引する二つの巨大なエンジンになるのは間違いありません。この二つのエンジンが回ることで、周辺の投資先を巻き込みながら、向こう3年、5年かけて、アセットバリューは右肩上がりで成長していくと思います。
SBGは、大型投資を完了したオープンAIと共に、米国でAIインフラを構築する「スターゲート計画」を本格的に推進していく。一方で、オープンAIはエヌビディアや米AMDとも提携を締結し、データセンター投資の計画をを拡大し続けている。AIバブルへの警戒感が高まる中、次ページでは、孫氏“腹心”の後藤CFOがAIインフラ構築プロジェクトの全貌を余すところなく語った。







