円・ウォン・ペソはなぜ売られ、豪ドルは強いのか?アジア・オセアニア有事通貨の「序列」Photo:PIXTA

「ドル離れ」局面で円が連れ安になった背景には、経済・安全保障での対米依存という米国と“一蓮托生”の構図がある。同じもろさは韓国ウォン、フィリピンペソにも及び、台湾・朝鮮半島有事の最前線に立つ通貨は有事通貨として評価されやすい。一方でAUKUS(米国、英国、オーストラリア3カ国よる安全保障協力の枠組み)の一員である豪ドルは上昇した。地政学リスクの東アジアからの距離と資源国としての強みが分岐点となる。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)

米軍依存と地政学リスクが映す
有事通貨としての姿

 昨年来、筆者は経済・安全保障面で対米依存度が大きいゆえに、「ドル離れ」に応じて円も連れ安を強いられているという一蓮托生リスクを注視してきた。実はこれは円に限ったことではなく、昨年は韓国ウォンやフィリピンペソなどアジアにおいて周辺有事の最前線となりそうな国の通貨もやはり軟調だった。

 もちろん、人民元や台湾ドルもさえない動きだった(図表1参照)。なお、台湾有事が争点化しやすいものの、それと朝鮮半島有事は同期しやすいという軍事的な分析もあるため、当事国の通貨である韓国ウォンが注目されるのは首肯できる。

 安全保障依存度を把握する計数は多様だが、単純に米軍の基地・施設数が世界で最も多い国は日本であり、必然的に駐留している米軍人の数も世界最多である。これらの数字が東アジア・インド太平洋地域における米軍の戦略的優先順位を反映していることは論をまたない。

「中国が台湾有事を成功させる唯一の道は日本が米国に協力しないケース」というシミュレーションもある中、日本は立派な紛争当事国であり、円は有事通貨という位置付けになる。

 次ページでは、日本、韓国、台湾、中国以外のアジア・オセアニア通貨の有事通貨としての度合いを検証していく。