スマホが登場し、ゲームはこれからどこに向かう?
川村 宮本さんが1981年に初めて手がけた『ドンキーコング』から
30年以上が経って、ファミコン時代にいろんなことをやりくりして生み出したシンプルなゲームの面白さを、すべてがハイスペックになって何でもできてしまう今の業界で再現することは、やっぱり難しいんでしょうか?
宮本 スマートフォンでほとんどのゲームができてしまうんじゃないかっていう脅威がある一方で、ゲーム文化全体はというと、専用機がどんどん高性能になって、世の中とはあまり関係のない豪華で高価なものに進化してしまったのかなと。だから、スマホのおかげでゲームがまた日常に落ちてきたとも感じていて、例えば「ファミコンの頃の方がよかったよね」っていうゲームを今作っても遊んでくれる方はいるし、かえって人口が多かったりもするんだと思うんです。つまり、作る方も「自分はどのあたりの層を押さえてやるのか」が選べるようになったという意味では、悪くない方向に動いているんじゃないですかね。
川村 映画も誕生して120年くらいになりますけど、一切CGを使わないでアカデミー賞を獲る人もいれば、全編CGで作る人もいて、両方にニーズがあります。
宮本 僕は映画のことはあまり詳しくないんですが、日本だと基本的に劇場とテレビ放送でしか観ることができない印象があります。ただ、たまにヨーロッパの素敵な短編なんかを観て「これはどこで売っているんだろう」と思って、コアなお店に行ってDVDなんかを見つけると、新鮮なんですよ。例えばゲームでも、そういう枠にはまらないものをもっと作りたいですね。
川村 今はYouTubeなど流す場所もたくさんありますしね。
宮本 『ピクミン』のムービーを作ってみたのは、YouTubeみたいな出口はまだ増えるし、任天堂としても出口を持つようになってきて、放送するとなってもテレビ局に相談に行かなくていいと思ったからです。実際、『ピクミン』では3Dアニメーションの一つの販売方法として3DSを打ち出しています。