ここでインテルにとって幸いだったのは、マイクロプロセッサがメモリに代わる主力製品として、社内で頭角を現しつつあったことだ。マイクロプロセッサでは、製造技術ではなく、回路設計技術やマーケティング力が成功要因になる。マーケティング力が重要になるのは、顧客であるセットメーカーとともに多様な用途を開発する必要があるからだ。このため、装置メーカーと日本の半導体メーカーに奪われた覇権を奪回できる可能性があった。

 ただ、この時点では、まだマイクロプロセッサの用途として、パソコンが爆発的な成長を遂げる姿までは見えていなかった。オフィス用システムから産業機械に至るまで50種類以上の用途をリストアップした際に、パソコンは含まれていなかったという。

 このため、パソコン用のOSを開発したゲーリー・キルダールが、それを売り込みに来た時に断ってしまう。仮にこの時にOSを買収していれば、インテルとマイクロソフトが合体したような企業が生まれていたかもしれない。

 このように、事業発展の可能性をどう見るかによって、買収の持ち込み案件があったときに、その見え方が変わってくることがわかる。仮にパソコンがマイクロプロセッサの重要な用途として見えていたら、キルダールのOSが将来10兆円以上の事業価値を生む可能性があったことも見えていたかもしれない。

PCの世代交代をリードすることで
独占企業への道を開く

 その後、アップルIIの成功は、マイクロプロセッサをベースにしたパソコン時代の到来を告げた。これに対抗してIBMもインテルのマイクロプロセッサをベースにしたパソコンを投入する。

 この時点で、グローブはパソコンの成長に賭ける選択を行う。そして、数世代先までのマイクロプロセッサの開発ロードマップを描き、パソコン企業に代わってPCの世代交替をリードするようになっていった。また、マイクロプロセッサの世代が替わっても、古いソフトウェアを利用し続けられるように世代間の互換性を確保することで、独占企業への道が開けることを発見する。

 互換性があれば便利になる。するとインテルのプロセッサを選択するユーザーが増える。このため、インテルのプロセッサ用に書かれるソフトウェアがさらに増える。そしてまたインテルのプロセッサが売れるという、雪だるま効果が働くことに気づいたのだ。

 さらにグローブは、自社を単なるマイクロプロセッサのサプライヤーとして見るのでなく、パソコンのアーキテクチャを創造する企業として見る世界観があることも発見する。それではここで、エクササイズに取り組んでもらおう。

【エクササイズ】
Q:インテルをマイクロプロセッサのサプライヤーとして見た場合、成功要因は先ほど述べたように、回路設計技術やマーケティング力になります。しかし、パソコンのアーキテクチャを創造する企業としてみると、それとは違った成功要因が浮かび上がります。グローブはどのような成功要因を見出したのでしょうか?