この騒動について、三菱車ファンやユーザーと接する三菱販社などから、「またもか!何で」との声が上がるのは、過去に二度の大規模なリコール隠し事件が起き、コーポレートガバナンス(企業統治)を揺るがす事態が続発して、企業イメージ低下、ブランド失墜、販売減退、深刻な経営不振という悪循環に繋がった忌まわしい記憶があるためだ。だからこそ、世間の見方は厳しい。

 同時に、今回の燃費不正問題の該当車が、三菱自と日産の軽自動車合弁事業会社「NMKV」による初の共同開発車だったことにより、「真相は調査中」(相川三菱自社長)ではあるものの、今後両社間に亀裂が生じ、協力・提携関係の空中分解につながる可能性も出てきたと言えよう。

 三菱自がこの燃費不正を認めて発表したことは、先の独VWの排ガス不正問題に続いて、自動車業界に大きな衝撃を与えることとなった。環境対応に真摯に取り組み、燃費向上や次世代エコカー開発を進化させていく業界の方向性に、水を差すものである。

 VWのディーゼル車排ガステストの不正問題は、米国に端を発してグローバル市場に影響を与え、いまだに収束への先行きが見えない。一方、三菱自工はリコール隠し問題から十年余が経過し、その反省のもとに体質改善、社内コンプライアンス(法令遵守)の徹底を進めてきたはずが、「石垣を積むように改善してきたものが崩れて、全社員に徹底することの難しさを感じている。無念であり、忸怩たる思いだ」(相川社長)と、トップが悲痛な面持ちで語る事態となった。

三菱自と日産の軽自動車
合弁事業は空中分解か?

 そもそも今回、三菱自が製造して三菱ブランドと日産ブランドに供給している軽自動車の燃費不正操作は、2010年12月に三菱自と日産が事業協力関係の拡大に合意し、翌年の2011年6月に軽自動車の企画・開発を行う合弁会社「NMKV」(日産・三菱・軽・ヴィークル)」を設立した時期にまで遡る。

 それまで三菱自は、日産に軽自動車をOEM(相手先ブランドでの生産)供給していた。一方、日産は三菱やスズキから軽自動車のOEM供給を受けてきた。三菱自は、リコール隠し後の経営再建途上で軽自動車開発投資に余裕がなかったため、軽を主力とする水島製作所のフル稼働を目指すために、日産と共に軽自動車開発企画の合弁会社を設立するに至った。一方の日産は、国内自動車市場における軽自動車販売の高まりのなか、従来のOEM供給を受ける立場から方向転換し、開発・デザインに参画して本格的に軽自動車事業に乗り出すことに意欲を示していた。