都市伝説5:原価率5割なので繁盛していても経営は苦しい

 さて、業界トップのスシローの経営方針のひとつが原価率50%のキープだ。これは、「原価率は25~30%程度が常識」という外食業界の中では非常識な数字である。私も4年ほど前に戦略コンサルタントの仕事で回転寿司業界を詳しく調べたことがあるのだが、回転寿司大手は軒並み40%台中盤で、中でもスシローは飛びぬけて原価率が高い経営を行っていた。

 円安が始まるとこの構造が重荷になってくる。一皿100円(税別)の商品で商品の仕入れ値が上がれば、一皿あたりの原価率はどうしてもあがってしまう。

 実際、イチ顧客の記憶で言うと、円安が進み始めた時期に「フェア」や「吟味ネタ」といった名称で一皿280円の寿司メニューが回転寿司に増えてきた時期があった。そうしなければ本マグロの中とろなど、回転寿司に並べることが不可能だという事情はある。

 とはいえ実際、スシローのお店に行くと、今でもそのような280円の皿は少数派で、100円寿司だけで十分に食事を楽しむことができる。

 回転寿司の原価率が高いのは、それだけたくさんの価値をお店が顧客に還元しているということだ。これはむしろ好調経営の秘訣であって、原価率が高いから経営が苦しいのではない。逆に原価率50%をどうキープするかが経営目標になっていて、この水準がキープできる限りは、顧客に高い価値を還元できるのでむしろ顧客回転率が上がって経営は楽になるのだ。

 この原価率をキープするための回転寿司店の経営努力はすごい。しょうゆの小皿をなくしたり、それまでのわさび入りからすべての寿司をわさび抜きにしたのは、すべて価値をかえずに人件費コストを下げる目的だ。

 寿司ロボットを見せていただいたことがあるが、一貫分のしゃりが高速で出てくるので生産効率はすでに相当高い。ところが、ロボットを見せてくれた経営者の方は「まだだめだ」と語っていた。一貫分のしゃりが出てくるということはそれを皿に2つ並べるところで人件費がかかってしまうからだ。近い将来は、最初から寿司ロボットに二貫ずつ皿の上にしゃりを載せるような機械を開発させたいと言う。

 これだけの生産コスト低減の努力をすることで原材料費があがっても一皿100円をキープしていて、しかも原価率は50%と相変わらず高い。そこに回転寿司の商品としての魅力があり、魅力があることがわかっているからこそ、回転寿司店には顧客が殺到するわけである。

 このように「回転寿司経営に危機があるのでは?」という都市伝説を検証してみたが、その結論としては当分、回転寿司経営には死角はなさそうである。