また、上層部の出世争いによる人事抗争は、家電業界に限らず、日本の産業界に共通するエネルギーの発露であり、むしろ有効競争が機能している企業ガバナンスの一環としてプラス指向で評価する向きもなくはない。しかし、家電業界の場合は度が過ぎている。特に、カリスマ性の強い創業者の引退や逝去に伴う後継者争いで、躓いている事例が多い。

 松下幸之助をはじめ、早川徳次や井植歳男らのケースは、その典型例である。後継者の育成に関する遺訓集も出している松下幸之助のパナソニックでも、人事抗争が母屋の凋落の引き金になっている(詳細は、岩瀬達哉著『ドキュメント パナソニック人事抗争史』講談社)。

 東芝の場合は、創業者ではないが、過去の経営危機を救った中興の祖である石坂泰三や土光敏夫の両名が同社のトップ在籍中に相次いで当時の経団連(現在の日本経営者団体連合会)の会長に就任していることが刺激となって、上層部の出世争いに拍車をかけてきた面が否めない。

「甘えの構造」を醸成し
助長してきた3つの要素

「甘えの構造」を醸成し助長してきた背景には、基本的には半世紀にわたる農耕型の慢心経営があるが、次の3つの共通要素も見逃せない。

 1つには、監督官庁の経済産業省が「日の丸家電」の国際競争力を強化する大義名分の下で口を出してくる、政策的な介入である。往々にして短期的な効果は期待できても、より必要な構造改革とその課題解決に役立つとは限らない。かえって政策依存心を強めて、自力更生力を弱め、甘えの構造を助長してきた面が否めない。2009年5月の家電エコポイント制度の導入は、典型的な失敗例である。

 2つには、経営の多角化に伴う弊害である。好調な事業の陰に隠れて、不振な事業の効率化や採算への透明性を求める圧力を弱め、効率化への改善、改革やイノベーションへの投資機会を見損なうなど、不採算事業への厳しい監視、監査や切り出しへの経営努力を鈍らせ、やがては企業内で抱え込み、課題解決を先送りする点である。これには、日本国内に経済や産業のスケールに見合うだけの、いわゆるM&A(合併・買収)市場が不幸にもいまだ育っておらず、未成熟であるという事情も見逃せない。これは、政策の怠慢の誹りを免れない。