上司を怒鳴る20代女性への「制裁」
蘇ったトラブルメーカー社員

 中高年で中だるみ社員になるかもしれない20代社員を、まっとうな社員に変えた一例を挙げよう。

 十数年前、筆者が会社員をしていた30代前半の頃のことだ。筆者の部署には「トラブルメーカー」の女性がいた。当時、20代後半。国公立の文系では入学難易度で上位2~3位に入る大学を卒業していた。

 事務処理能力は同世代の中で相当に高いが、わずかのトラブルで感情的になる一面があった。たとえば、40代後半の上司と仕事の進め方をめぐり、激しく言い争う。興奮しているのか、泣きそうな表情で言い返すこともあった。

 ある日、筆者が外出先から戻ると、女性は上司の横で大声で怒鳴っていた。「なぜ、そんなに遅いのですか?」「どうして決めないのですか?」と――。その声は、20メートルくらい先まで聞こえるほどだった。上司の意思決定が遅く、しわ寄せを受け、仕事が暗礁に乗り上げていたようだ。

 この抗議は過激すぎた。上司はその後、報復をした。女性にある仕事を命じた。著名な作家をインタビューし、時間内に記事としてまとめるというものだった。記事の分量、締め切りまでの時間を考えると、40代以上のベテランでないと対応できないレベルだった。上司は、女性の力をはるかに超えた仕事をさせようとした。助言も指示もしなかった。女性は自尊心が高い。「売られた喧嘩は買う」と言わんばかりに仕事に向かった。だが、苦心しているようだった。

 上司は他の社員にも「〇〇さん(女性の苗字)の邪魔にならないように……」と言い、女性と話をさせないように仕向ける。しかも、他の仕事も女性にあてがった。その仕事の量は多かった。女性は黙々とこなした。2週間ほどの間、深夜までとりかかっていたという。家に持ち帰り、朝方まで仕事をしていたようだ。

 上司は、会議の議事録も1人で書かせた。その数週間、部内の誰も女性とは口をきかない。我が身が可愛いからか、女性には近寄らない。筆者もその1人だった。誰よりも成り行きを興味津々で見ていたと思う。

 女性は締め切り寸前、上司に「間に合いそうもありません」と助けを暗に求めた。動揺していることもあり、唇の端を歪めて話していた。時々声がうわずったり、裏返しになっていた。上司はそれを突き放す。女性は結局、締め切りに間に合わせることができなかった。作家のインタビュー記事だけではなく、他の仕事の多くも中途半端なままだった。上司は部内のあらゆる仕事から女性を外した。

「厳しい対応」――。

 30代前半だった筆者にとっては、強烈な印象を受ける出来事となった。上司のこの対応には、賛否両論があるだろう。いじめやパワハラならば、否定されるべきである。だが、上司は「指導・育成」と思っているフシがあった。

 一方で、女性の上司に対する過激な抗議は問題だった。これよりもはるか前から、仕事の進め方などについて激しく抗議をすることがあった。議論の末、ねじ伏せようともする。それらが積もり積もって、上司はキレてしまったのかもしれない。