マイケル・メッカ(Michael Mecca)
Planet Hollywood Resort& Casino、Crown Ltdなど、ラスベガスやメルボルンのエンターテインメント産業で経営幹部を歴任。2009年からギャラクシー・エンターテインメント・グループ(GEG)社に入社し、現在社長に就任。GEG社によるモナコSociete des Bains de Mer (SBM)の株取得に伴い、同社取締役に就任。マカオ・ゲーミング・マネジメント協会(MGMA)においては名誉会長を務める。

 近年、ラスベガスを抜いて世界最大規模となったマカオのカジノ産業。そのマカオではGDPの6割近くをカジノ産業が占める。ポルトガルの統治下にあったマカオは1999年に中国に返還され、その後観光地化を目指すが、2003年の中国人の自由旅行の解禁とともに発展したのはカジノ産業であった。賭博を禁止する中国の隠れ蓑として利用されてきたためで、中国の公務員が中心となり、マカオで巨額の公金を賭博に投じてきたことは衆目の一致するとこでもある。

 だが、習近平政権で反腐敗運動が始まると、上昇の一途にあったマカオ経済も曲がり角に。2014年からマカオ経済は失速し、カジノが叩きだす粗利も2013年の3618億パタカをピークに2015年には2318億パタカと36%も激減した。賭博を中心とした大陸客需要に依存はできない──マカオでは今、こうした新たな機運が生まれ、「脱賭博」が新たなキーワードになりつつある。マカオ経済の新たな選択となるカジノ産業の新モデルとは何か。そしてその先にある日本進出の形とは。統合型リゾート「ギャラクシー・マカオ」を経営するマイケル・メッカ氏に聞いた。

──2000年初頭、マカオには今に見るようなカジノ産業はありませんでした。過去十数年において、マカオはどのような変化を遂げたのでしょうか。

 2000年以前、すなわちポルトガルから中国に返還された時点で、マカオにはカジノ場は1ヵ所しかありませんでした。それが「リスボアホテル」(SJM Group)で、当時はカジノ・ライセンスを持つ唯一のホテルでした。その後、マカオ政府は新たに米Wynn Las vegasと私たちギャラクシー・エンターテインメント・グループ(以下GEG)に、さらにその後は豪Melco Crown Entertainment、米Las Vegas Sands Corporation、MGM Resorts Internationalにライセンスを与えたことが、産業形成のはじまりとなったのです。現在はこの6社が母体となって、マカオ全体で32件(2016年4月現在)のカジノを経営しています。

典型的なカジノホテルのスタイルを採るスターワールド・ホテル

 マカオでいう“典型的なカジノホテル”をご存じでしょうか。私たちGEG傘下のホテルでいえば「スターワールド・ホテル」がそれに相当します。入口とカジノ場が直結し、上階がゲストルームになっており、長期滞在客や常連客を多く収容するのが特徴です。ちなみに、スターワールド・ホテルの顧客は70%が大陸からの客、12%が香港からの客で構成されています。

 私たちの歴史は、2004年に始めた小規模のカジノ経営にさかのぼります。2006年にスターワールド・ホテルを開業し、その後は統合型リゾートを目指しました。2011年には「ギャラクシー・マカオ」(第1期)をオープンし、続く第2期の開発を経て、110万平米に6つのホテルを建て、合計3800の客室を持つ巨大で豪華なリゾート施設を実現しました。大陸の中国人客をターゲットにし、その好みを反映させたことから、開業して以降、多くの大陸の中国人客が訪れるようになりました。ギャラクシー・マカオのビジターのうち75%は大陸の中国人客であり、香港人客を併せれば85%を中華系が占めています。

──過去数年で倍増した大陸からの旅行客ですが、2014年の2125万人をピークに2015年は2041万人と4%減少、カジノ産業の粗利も2014年第1四半期の1024億パタカから2016年同期には45%も激減しました。「大陸の富裕層狙い」は今後も続くのでしょうか。

 中国も変化し、世界も変化しています。GDP成長率は落ちても、なお6%台の成長を維持する中国経済は注目に値する一方、実際、その落ち込みはマカオ経済にも大きな影響を及ぼしたことは否めません。これまで大陸の富裕層は私たちのビジネスにおいても金額、人数ともにトップでしたが、これが変化する可能性があります。