反戦平和運動から落選運動へ
「反安倍」色を強める
安全保障関連法案に反対をする人々のシンボルとして注目をされたSEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動、シールズ)の方向性に「微妙な変化」が訪れている。
Photo:田村翔/アフロ
簡単に言うと、「戦争したくなくて震える」というスローガンに象徴される「反戦平和運動」から、来年夏の参院選に照準を合わせて、安保関連法案に賛成をした国会議員を当選させない、といういわゆる「落選運動」へと大きく軸足を移そうとしているのだ。
報道によると、SEALDsの中心的メンバーである奥田愛基さん(23)がこの方向性を示唆したのは今月11日。国会前でこんなシュプレヒコールをして参加者から喝采を浴びた。
「テレビでビートたけしさんが『選挙で呼びかけをした方がいい』と言っていた。じゃあさせてもらいましょう。賛成議員を落選させよう」
彼が本気であることは、その後のSEALDsの行動からもうかがえる。
今月22日、反原発運動の集会に参加。さらに、来月2日には、「首都圏反原発連合」や「原発をなくす全国連絡会」が事務局をつとめる大規模デモ「安倍政権 NO! ☆ 1002 大行進 民主主義を取り戻せ!戦争させるな!」にも「実行委員会参加団体」の筆頭に名を連ねているのだ。
これは「反安倍」という旗印のもと主義主張の異なるさまざまな市民団体、労組、NPO法人などが「連帯」したものであり、フライヤーにも、《原発 安保法制 憲法 沖縄米軍基地 秘密保護法 TPP 消費税増税 社会保障 雇用・労働法制 農業・農協改革 ヘイトスピーチ 教育》とズラリ。さながら「反対運動の宝石箱」ともいえる様相を呈しているのだ。
ピークの過ぎ去った「安保」と「秘密保護法」だけでは、来夏まで息の長い「落選運動」を継続することは難しい。そこで、他の反対運動と「連帯」「共闘」をしていけば、「反安倍」の勢いをキープできるという戦略なのは容易に想像できる。
もちろん、他団体の方たちにも悪い話ではない。マスコミがカメラを向ける「人気者」がデモや抗議活動にやってきてくれれば、こちらもスポットがあたる可能性もある。安保、基地、原発というメジャー反対運動だけではなく、教育、雇用、農業というテーマにも再び注目が集まるかもしれないのだ。
そういう意味では、安保反対運動が過ぎ去ってもSEALDsの勢いは衰えることはないのではと思うかもしれないが、不安要素もある。