「アルバイトの人手不足」が話題になって久しい。現場ではいったい何が起こっているのか?今回、大手外食チェーン店の現場で奮闘する3人の店長にお集まりいただき、都内某所で「店長覆面座談会」を開催した。
聞き手は、テンプグループとともに、全国約2万5000人を対象としたアルバイト雇用調査を行い、『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(ダイヤモンド社)を刊行予定の東京大学・中原淳准教授。
第3回となる今回は、クレーム対応やバイト育成の失敗談など、店長たちの悩みが次々と飛び出した。(構成/高関進)

リーダーは仕事のスキルより
人間性を重視して育てる

【中原淳(以下、中原)】リーダー格になるアルバイトの見分け方と、育て方はいかがでしょう?

B店長(男性)某ファストフードチェーンで店長歴7年。現在は都内(23区外)の店舗を担当。学生、主婦、フリーターと多様なアルバイトを抱える。

【B店長】人間性ですね。時間はかかるかもしれませんが、人あたりのいい人のほうが、仕事ができる人よりみんなを巻き込む。もちろん、両方備わっていればいいですが(笑)。
「この子はシフトにいっぱい入ってくれるから、多少問題はあるけどマネジャーさせちゃおう」という場合、のちのち痛い目に遭います。それなら、仕事はあまり速くなくても、きちんとしていて性格がよく、人あたりがいい子を育てます。

【A店長】いまの店に関していうと、学生が9割超で主婦がいないんです。学生さんの特徴として、自由さを求めたり、責任を負わされることをすごく嫌う。なので、「お客さんに対しては全員で責任を取ること」と言って、リーダーはつくりません。ただ、「みんながリーダー」という感じでそれぞれに仕事を与えて、休みたいのであれば誰かに伝えてから休むように言っています。

A店長(男性)某ファミレスチェーンで店長歴13年。現在は東京都心部の店舗を担当。周りに飲食店が多く、アルバイト1人あたりの採用単価は15~20万円。アルバイトは15名程度で、すべて学生。

【中原】もし、主婦やフリーターが多かったとしたら?

【A店長】そうはしないでしょうね。アルバイトもマネジャーもつねにどの時間も2人は常駐するようにして、何かトラブルがあれば1人がそれに対応して、あとは店を守るようにしています。そうすると個人の負担も軽減できて責任感も薄まるので、次に誰かを育てようというときも、「マネジャーは大変そうなのでいいです」ではなく、「僕にもできそうなので、ずっとやっていたいです」と思ってくれやすくなります。
リーダーやコアとなる人が1人だけだと、その人を見て「すごく大変そうだな」と思って、「自分には無理だな」と判断されちゃいますから。

C店長(男性)某中華料理チェーンで店長歴4年。現在は都内(23区外)の店舗を担当。つねにギリギリの状態でお店を回しており、外国人アルバイトも採用している。

【C店長】うちも学生さんが多いですし、もちろん仕事の速さも求めますが、コミュニケーションが取れてみんなをまとめる力がある人や、指示出しができる人が一番いい人材だと思います。
キッチンとホール、あちこち動きっぱなしの仕事なので、それをこなすだけでもかなりの時間を要しますが、そこからさらにリーダーが務まる人をどう育てていくかは店長次第でしょう。コミュニケーションが取れて、人に指示できるような人であれば、経験が浅い人でもいいと思っています。