「アルバイトの人手不足」が話題になって久しい。現場ではいったい何が起こっているのか?今回、大手外食チェーン店の現場で奮闘する3人の店長にお集まりいただき、都内某所で「店長覆面座談会」を開催した。
聞き手は、テンプグループとともに、全国約2万5000人を対象としたアルバイト雇用調査を行い、『アルバイト・パート[採用・育成]入門』(ダイヤモンド社)を刊行予定の東京大学・中原淳准教授。
覆面形式ならではの「ぶっちゃけトーク」だった前回に引き続き、第2回も生々しい話題が数多く飛び出した。(構成/高関進)
リーダー格、ベテランアルバイトと
店長とのパワーバランス
【中原淳(以下、中原)】調査では、さまざまなことがわかっていますが、店舗にいる「インフォーマルリーダー」の存在も浮かび上がってきています。インフォーマルリーダーとは、店長のようにフォーマルなリーダーではなく、アルバイトやパートのなかにいる「非公式の右腕人材」のことですね。新しく店長として赴任した方の多くが、「長く勤めているキーマンのアルバイトさんをどう掌握していくかがキモだ」と言っていますが、実際どうでしょう?
【C店長】私の店は社員が私一人しかいないので、アルバイトを大事にしないと店がそもそも回らないんです。ですから、特にリーダー格や主婦の方は大事にしていますね。私も最初は、前任の店長、もしくは長く働いているバイトさんから話を聞くようにしました。
「こうやったら効率が上がりますよ」ということを、最初にリーダー格の人に話してみると、「あ、いいですね、じゃあさらにこうやったらどうですか?」とアイデアをくれることがあります。そうなってくると、「やった!」という気持ちになります。
【中原】リーダー格にまず相談していくというスタイルですね。
【C店長】新しく着任したときは、そういう人と仲良くできないと全部崩れてしまい、1からすべてやり直しになりますから。
【中原】前任の店長との引き継ぎはあるんですか?
【C店長】アルバイトに関する引き継ぎは、「この人はこれが得意」「この人はこういう性格」など一人ひとりあります。私の店はアルバイトが20人くらいなので、「この人がリーダー格」「この人はちょっと気をつけてね」など引き継ぎを参考に観察し、様子を見ながらですね。店長が変わったとき、最初はアルバイトさんって本性を隠すんです。
【中原】「引き継ぎの話と違うじゃない」ということが最初はある?
【C店長】店長のやり方も変わるんで、それに疑問を持っていやになってくるアルバイトさんもいると思います。でも、自分の色を出すためにいろいろ工夫してやっていけばなんとかなるだろうと、あまり難しく考えずにやるようにしています。
【A店長】リーダーさんが話をわかってくださる方であればいいんですが、そうでないときも多々あります。リーダーさんは今まで自分が頼られてきたわけで、その地位が脅かされそうになると気分を悪くしたりするんです。
でも私は、そういうリーダーさんの権力を、できるだけなくしていこうという方針です。新しく採った人に、リーダーさんがやっていた仕事をいきなりやらせる。「リーダーさんじゃなくても誰でもできるんですよ」という雰囲気にしていくと、それが気に入らないリーダー格の人は辞めるか、こちらの言うことに耳を傾けるようになります。なるべくピラミッド構造にならないように、「そんなところで威張らなくてもいいんだよ」とわかってもらうようにしますね。
店長が人手不足で困っていると、労働時間の部分でも仕事の幅でも、どうしても「できる人」に頼ってしまいがちになります。特定の人に頼ってしまうと、その人がいなくなると回らなくなってしまう場合があり、その人の気分で店が左右されることをなくしていこうということです。