「WTI原油価格連動型上場投信」という名のETF(上場投資信託)が8月3日、大阪証券取引所に上場された。日本で初めて商品先物を投資対象にするというこのETF、過渡期にある国内市場の命運を占う試金石になりそうだ。
上場時の合格最低ラインは「1日2億~3億円の売買代金」(外資系運用会社)と想定されるなか、初日が2億4100万円。WTI原油先物が一バレル70ドル超えの追い風を受け、個人資金が流入し、2日目も4億円を突破。まずまずの滑り出しを見せた。
上のグラフからもわかるように、国内ETF市場は欧米と比べて大きく後れを取っている。
法改正や各取引所の取り組みで、国内ETFは70本以上に増加したものの、中身はTOPIXを業種別に小分けにした商品などバラエティに乏しく、流動性が低い商品ばかり。そのため機関投資家が売買を躊躇して出来高が伸び悩む悪循環から抜け出せずにいる。
その突破口と位置づけられるのが原油ETFだ。設定した独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントは原油ETFが成功すれば、穀物やプラチナ、銀などでもETF組成に乗り出し、市場の多様化を促す考えだ。
「なじみのある原油でダメなら、日本に商品ETFは根づかない」(大証)と大きな期待がかかる。
同社は今後、出来高を増やすことで事業法人のヘッジ目的、金融法人の利用を見込むが、「機関投資家が投資するには、1日少なくとも数十億円の売買が必要」(外資系運用会社)と指摘されるように、そのハードルは高い。
これに対し今回マーケットメークを担う日興シティグループ証券は「原油ETFは初の金銭信託型ETFでもあり、解約時には従来のように現物ではなく、金銭で戻ってくるなど、機関投資家の利便性が増した」と主張。裁定取引を行なう外資系金融機関を中心に問い合わせが入っているという。
既存の大手運用会社も黙ってはいない。大手の一角が株価指標の2倍のレバレッジをきかせたETFの設定を検討しているというのだ。金融庁が難色を示してきた商品だが、実現すれば市場の多様化にも弾みがつく。
個人投資家に加えて、機関投資家を呼び込むには、流動性の確保はもちろん、投信より低いとはいえ、大手で1%近くある信託報酬を、欧米並みに下げることも求められる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 山口圭介)