「競争相手」が少ないゼロイチにこそ勝機はある
むしろ、話は逆。
「エース級ではない」という自覚のある人こそ、ゼロイチに挑戦すべきだと思うのです。
実は、僕がゼロイチを志した理由はふたつあります。ひとつは、自分の手で「今までになったモノ」をつくり出して、誰かにワクワクしてもらいたいという理由。子どものころから、ゼロイチのプロダクトに触れて「これは、すごい!」という感動を与えられてきましたから、その恩返しをしていきたいという積極的な理由です。
そして、もうひとつの理由は、保守本流の領域では、競争相手に勝てるだけの成果を出せないと思ったから。そんな消極的な理由だったのです。
僕は、子どものころから「優秀ではない」という自覚はありましたが、トヨタに入って、改めてそれを痛感させられました。周囲を見回せば、頭脳明晰かつ人間関係もそつなくこなす優秀な人ばかり。トヨタ流の「型」を忠実に守る保守本流の仕事では、とてもではありませんが、まともに戦ったら勝てないと悟らざるをえませんでした。
一方、ゼロイチの領域は、いわば競争相手のいないブルーオーシャン。トヨタの保守本流の事業で成果を出すという、誰もがめざすレッドオーシャンではなく、競争相手の少ないゼロイチならば勝てる可能性があると考えたのです。
もちろん、それは決して楽な選択ではありません。
きっちりとトヨタの「型」を守れば確実に成果の出る既存事業とは異なり、どんなに努力をしても、成果が出るかどうか未知数なのがゼロイチです。しかし、レッドオーシャンでは勝負のできない僕は、ブルーオーシャンに賭けるしかないと思ったのです。そこならきっと、自分の居場所を見つけられるはずだ、と。
そして、そう考えているところに、LFAの話が舞い込んだというわけです。
願ってもないチャンスでしたから、僕は迷わずその仕事に没頭。ゼロイチのキャリアを切り拓くきっかけをつかむことができたのです。だから、僕は、「優秀ではない」「1番手にはなれない」と思う人こそ、ゼロイチにチャンスを求めるべきではないかと考えているのです。