3年で3割の新卒社員が辞める。厚生労働省が2015年10月に発表した調査では、大卒社員のうち、新卒で3年以内に会社を辞めた人の割合(離職率)は32.3%。
この数字は今に始まったことではなく、1990年代半ばから約20年間、それほど変わっていない。
今は「売り手市場」のため、企業側も学生を確保するべく相当な努力をしている。インターンシップなどの就業体験もそうだ。それでも3割は辞めていく。なぜなのか。採用担当者が抱える「今どきのジレンマ」についてお伝えしたい。
「せめて、辞めても嫌いにならないで」
「入社後に『こんなはずじゃなかった』と辞めていく人が後を絶ちません。みんな会社を嫌いになって辞めていくので、せめて『辞めても好きな会社』を目指しているくらいです」
そう話すのは、広告代理店で採用担当人事を務める男性だ。
2017卒の面接が解禁となり、2018卒のインターンシップ情報が公開された6月。各社の人事担当者はそれこそ寝る間もないほどに忙しく採用活動に奔走している。
相当な苦労の末に、採用した学生たち。しかし、残念なことに、毎年「3年で3割」が辞めていく。採用コストや入社後の育成費用を考えると、企業にとっては大きな損失だ。
「こんなはずじゃなかった」を解消するべく、就業体験という形でインターンシップを積極的に行う企業もある。だが、それでも「3年で3割」問題は、一向に解消する気配はない。なぜなのか。
この問題の一番大きな原因は、新卒採用のプロセスで「企業が学生に見せている姿」と「本来の姿」とのギャップにあるのではないか。今回は、ギャップが生まれてしまう背景を、人事の生の声とともに説明していきたい。