就業体験なのに職場を見せない!?
インターンが生む現実とのギャップ
ここまで説明してきたギャップを埋めるためにも有効なのがインターンシップだと考えられてきた。就業体験を通してミスマッチを防ぐ効果が期待されたのだが、実際は、残念ながらその機能を果たせていないものも多い。
学生に聞くと次のような答えが返ってくる。
「インターンシップと言っても、会議室でグループワークをするだけ。たまに若手社員の人がアドバイスをくれるが、実際の仕事のイメージは持ちにくかった」
企業の中には、実際の職場に学生を入れて、実際の業務を任せるところもある。
しかし、まだ全体の中で占める割合はかなり低い。
中には「何があっても職場だけは学生に見せられない」という企業もある。
なぜフロアに入れないのかを聞くと、
「説明会で見せている企業の姿や社員と実際にはギャップがある。学生たちの失望を生むから見せることができない」という回答が。
たしかに、一部ベンチャー企業のように、若手が活き活きと仕事をし、上司や先輩との関係もフラットで、普段からオープンな議論が交されているような、活気ある職場だったら問題ないだろう。
しかし、若手がベテランにものを言える雰囲気でなかったり、明らかにやる気のない社員がいる職場だったり、私語ひとつなくシーンと静まり返りカチャカチャとパソコンを叩く音だけフロアに響いていたとしたら…。
これは大げさな例かもしれないが、「優秀な学生を確保」する上で少しでもマイナスに働きそうなものがあれば、それを避けたくなる気持ちが出てくるのは当然かもしれない。
以上のような状況が重なり合うことで、理想と現実のギャップの溝は開いていく。
1ヵ月の現場インターンを実施する
花王、富士ゼロックス、三井住友銀行
それぞれの人事のコメントを聞くたびに、一朝一夕には解決できない現実を感じる。
しかし、少しでも現実に近いものを学生に見せる機会を提供することは必要だ。良いところも悪いところも含めて、学生たちに理解してもらう。その上で企業に応募してくれた学生は、入社後に離職する可能性はより低くなるはずだ。
実際に新たな取り組みをはじめている企業もある。
2016年の夏から、11の大学・高専と17の企業が連携して、オフィスや研究所で1ヵ月以上働いてもらうインターンシッププログラムが始まるという。これを経験すれば、「仕事の現実」を垣間見ることができる。社会に出てからのギャップも少ないはずだ。
実施するのは、花王、富士ゼロックス、三井住友銀行と幅広い業界から影響力のある企業が中心だ。今後もよりいっそうこの流れが活発になっていけば、一つずつ課題が解決されていく可能性がある。学生と企業のミスマッチが、少しでも解消されることを心から願っている。