結論から言うと、ポイントは各タスクの「終わらせ方」と、もう一度スケジュールを立て直した上で、やるべきタスクを“ならす”という「数日にわたる振り分け方」です。

 見積もりの甘さは、だいたい「その後もダラダラとやり続けてしまう」事態を引き起こします。それによって、全体のバランスが崩れていきます。終わるはずなのに終わらないことで、終わるまで続けたいという心理的抵抗が生まれるのです。

 例えば1時間で終わると見積もった資料作成が終わらず、あと2時間近くかかるとしましょう。そのとき、多くの人は無理矢理でも突っ走って残り2時間で完成させようとします。

 これが予定していた「シングルタスク」(まとまった時間でじっくりやる仕事)であれば問題ないのですが、実際はその日中に終わらせる必要がないケースがほとんどです。それによって、後ろの予定が崩れ、残業することになったり、それで済むならまだしも、予定がずれることによって、他のタスクが行えなくなってしまいます。

 前回の連載第7回でご紹介したAさんの場合、持ち時間を「コマ数」で割り出していました。例えば、資料作成に1コマ(1時間)を予定していたのに、実際はそれで終わらないとき、Aさんは決して続けてやらないと言います。

 ほとんどの仕事は、冷静に考えれば、今すぐ取りかかって今すぐ終わらせなければならないものはごく稀です。どんなに急ぎのものでも、数日は猶予があるはずです。もし慢性的に余裕がないなら、その仕事自体がおかしいか、取りかかるのが遅すぎるからです。

 仮に即日対応の仕事であっても、それが仕事として成立しているなら、時間内でできるはずで、それができないなら時間管理以前の問題です。

 Aさんにかかわらず、時間管理に成功した諸先輩たちが言うのは、仕事の「終わらせ方」だそうです。時間の見積もりはどうしても狂ってくるので、いかに「続けたい」という心理的抵抗に負けずに途中で終わらせるかが重要になります。

 もちろん、じっくり取り組む仕事には余裕のある時間を事前に確保すべきなので、どんな仕事でも途中で区切っていくという意味ではありません。ただ、それでも2時間くらいを過ぎると、徐々に集中力がなくなり生産性は下がってくるものです。

 先人たちが言っていたことの一つに、「発想は時間より『回数』で生まれる」というものがあります。熟考することは大切ですが、しばらく考えても答えが見つからないものは、一旦「終わらせる」のがキモのようです。

 そして、そのタスクを数回にわたって振り分けていくのです。本来3時間かかるタスクを1時間と見積もって終わらなかった場合は、一旦作業を終えて、例えば翌日とか翌々日に1コマ(1時間)ずつ振り分けていきます。

 一度にやろうとすることが時間割を壊す元凶です。大きな仕事は把握しやすい単位に分解するというのはタスク管理の大原則ですが、細かく分解したタスクをいかに締め切り日までの期間で振り分けるかが、負担を減らし、予定をずらさないコツです。

 突然生まれる想定外の仕事も、ついその場で取りかかってしまいがちですが、どんなに急ぎのものでも、猶予期間内でタスクを振り分けていきます。

 時間の見積もりは常にずれがちですが、ずれたときにもう一度調整し直して、いかに「終わらせるか」、そして数日にわたって「振り分けるか」を考えるようにしましょう。

 デッドラインを決めるというと、その期日までに猛スピードで根詰めてやっていくイメージがありますが、実際にうまくいっている人は、スケジュールを毎回調整し直しながら、かたまりのタスクを数日にわたって“ならして”いるのです。

【ポイント】予定した時間で一旦終わらせ、数日にわたってもう一度振り分ける

第9回に続く(6/13公開予定)