昨今、有名大手企業の不祥事がたびたび取り沙汰されているが、これは個人に原因がある問題ではない。間違いなく組織の問題である。そこで今回は、組織ぐるみの不祥事が起こるメカニズムについて解説したいと思う。

不祥事を起こす最大の要因は
「倫理意識の欠如」などではない

「いい会社」ほど組織ぐるみの不祥事が起こる理由組織ぐるみの不祥事、そのカギは「戦略の欠如」だと意外と気づいていない人が多いようです

 最初のキーワードは、「戦略の欠如」である。生存できる要件を満たしていない企業や組織は、いつか必ず不祥事を起こす。

 本来は、商品やサービスで正当に競争が行われるべきなのだが、研究開発能力、組織の実行能力、原材料の調達力、市場でのブランド力などの経営資源や、最低限必要な市場シェアなどが欠けていると、実際にはまともに戦うことすらできない。さらに、自分たちの弱みを帳消しにするような優れた戦略が用意されていなければ絶望的である。そのような状況下で、経営陣から一定以上の成果を強力に求められれば、現場は問題行動を起こさざるを得ない。

 たとえば、今からテニスプレイヤーの錦織圭くんと試合をして、何がなんでも勝たなければいけないとする。みなさんならどうするだろうか。一生懸命練習したところで土台無理だし、必殺技を編み出す時間もない。考えるまでもない。何らかの反則をするしかないのだ。不祥事を起こすのは、このように無理な状況下で無理な要求をされ、悪事を働かなくてはならないところまで追い詰められた組織なのである。

 不祥事を起こした組織の記者会見では、経営者が「なぜ違法行為を止められなかったのか」と追及される。そして第三者調査委員会の報告書には、倫理意識の欠如、規程の不備、評価の在り方の問題、それを放置した経営者の姿勢の問題などが列挙されるが、本当に問題視されるべきは「無理な条件で不可能な成果を求めた『戦略の欠如』」のほうである。有効な戦略がないなら、撤退し可能性のある分野に技術や経営資源をシフトするか、M&A(売却)などの手段を考えるか、などの選択肢をとるべきなのだ。