一方、増税延期反対論は、景気悪化は国際経済の悪化も消費増税も関連がないと指摘する。むしろ、景気悪化の真因は実質賃金の下落であるとする。消費税の影響ではないとする根拠は、2015年と現在で、消費税率が変わってないにもかかわらず、消費が減少しているからである。

 消費増税による消費の落ち込みは、前回の1997年の引き上げ時にも生じたが、このときには、実質賃金の増加により、2年後には消費税増税直前の値に戻り、その後増加に転じている。しかし、今回は2年たっても消費が回復していない。それは、実質賃金が2012年以降連続して減少しているからである。

 そして、実質賃金の減少は、消費増税という短期的な現象ではないと主張する。むしろ、高齢化の進展による労働人口の減少、経済の先行きに確信が持てず設備投資や賃金引き上げを行えない企業経営という構造問題であるとする。

 さらに、増税延期賛成派が主張する雇用の増加は、非正規雇用者の増加に過ぎず、むしろ経済基盤が確立せず結婚や子づくりに踏み出せない若者が増加していると指摘する。その上、消費増税がなかなかできないことで、社会保障の財源手当てがなされていないため、将来における施策の持続可能性に関して大きな不安があり、家計は消費拡大に慎重ならざるをえない状況になっていると主張する(野口悠紀雄「消費停滞は消費税のせいではない 増税再延期では解決しない」)。

 このように、増税延期に対するエコノミストの見解は完全に割れている。それにもかかわらず、国会では自民党から共産党まで100%増税延期支持というのには、非常に強い違和感を持たざるを得ないのだ。

増税延期賛成派の主張には、
日本政治のリアリティが欠けている

 筆者は、増税延期反対派に同意する。それは、政治学者の立場から見ると、増税延期賛成派の主張には日本政治のリアリティが欠けていると考えるからだ。

 この20年を振り返れば、「景気対策」という財政出動・金融緩和が何度も繰り返されてきたが、それは建設業や輸出産業など「斜陽産業」の延命策を続けたに過ぎなかったことは明らかだ。しかし、斜陽産業の延命策からは、日本経済の復活につながる新しいものはなにも生まれてこなかった。斜陽産業は、延命策が切れた時、元の瀕死の状態に戻るだけで、新たな延命策を求めるだけだった。時の政府はその求めに応じて、さらなる景気対策を行った。結局、「カネが切れたら、またカネが要る」の悪循環を繰り返した結果が、先進国最悪の巨額の財政赤字である(第129回)。