今回は、ベンチャー企業(正社員数400人)の執行役員に「創業経営者と学歴コンプレックスの関係」について話を聞いた。
取材した役員は、現在40代後半の男性。20代後半に金融機関からベンチャー企業に転職した。現在までの約20年間で3つのベンチャー企業で働いた。営業に一貫してかかわり、多くの経営者と接してきた。
ベンチャー企業を創業し、一定の成功を掴むのは難しいことだ。過酷な道のりであり、多くの人が挫折する。そのとき、「学歴や生い立ち、家庭環境などに強い劣等感を持つ経営者ほど、苦境を乗り越えることができる」と、筆者はこれまでの取材で度々耳にしたことがある。
果たして、それは本当だろうか。事実であるならば、なぜなのか――。そうした問題意識を持ち、取材を試みた。取材対象者を仮にA氏とし、インタビュー形式でお伝えする。
自己中心的で自己顕示欲が強い
成功したベンチャー創業者の共通点
A氏 私が前職で仕えた社長(50代後半)は創業者です。その後退職し、入社した今のベンチャー企業の経営者(40代前半)も創業者。この十数年で、営業で知り合ったベンチャー企業の経営者のほとんどが創業者です。合計で500~600人にはなるかと思います。会社を上場させた方もいるし、倒産させて行方不明になったと噂される人もいます。彼らの年齢は30代後半から40代半ばが多く、大半が男性。女性は依然少ないですね。
筆者 知り合ったベンチャー企業500~600人の7~8割に共通しているものはありますか。
A氏 世代により多少の違いはありますが、性格や気質は似ています。自己中心的で、自己顕示欲が強い。常に自分が組織の中心にいないと、気が済まない。側近や部下には、イエスマンであることを求める。逆らったり不満を言ったりする者を許さない。お金や地位、権力、権威、名誉などへの執着が、平凡な会社員よりははるかに強い。それくらいでないと、ベンチャー企業のトップとして、成功はまずしませんよ。
筆者 生まれ育った家庭や環境などは、どうでしょうか?
A氏 全員の生い立ちまでは正確には把握できていませんが、成人するまでの間に、何らかのトラウマ(心の傷)を持った人が少なくないことは間違いないと思います。たとえば、親が離婚したり、死別したり、家庭内不和が繰り返されていた家庭で生まれ育ったケースです。だから、彼らは猜疑心が強い一面があるかもしれませんね。人を疑うからこそ、成功できるとも言えるとは思います。
今の30代半ばは、やや違いますね。挫折や屈折したものはなく、軽い思いで起業したりしています。その柔軟さが、厳しい時代を生き抜くことができる理由の1つなのかもしれません。