無視できない
世界経済への影響

 英国がEU離脱を選択した場合、世界経済に対する影響も無視できない。

 足元の世界経済を見渡すと、今後の成長を牽引できる国が見当たらない。これが世界経済にとって、最大の課題だ。

 リーマンショック後、世界経済の牽引役を担った中国などの新興国経済の成長率は、低下しており、経済状況は不安定だ。中国を中心に新興国では債務が膨張し、景気の下方リスクは高まっていると考えられる。

 過去数年の間、米国の景気回復が不安定さを補い、世界経済を支えてきた。しかし、米国の経済がいつまでも堅調な回復を維持できるわけではない。第2次世界大戦後、米国は平均的に約5年の景気拡張を経てきた。2009年6月、米国経済がボトムアウトしてから、はや7年が経過している。

 米国の企業業績の動向などを見ると、景気回復のペースは徐々にスローダウンしている。5月の雇用統計の数字を見ても、米国経済の先行きに対する懸念は高まりやすい。

 最も懸念されるシナリオは、英国のEU離脱と米国経済のピークアウトが重なることだ。その場合には、世界経済は大きな苦境に直面する恐れがある。

景気が悪くなれば
下支えの手段はほとんどない

 現在、日・米・ユーロ圏を中心に主要国が金融・財政政策を総動員しており、追加的な経済政策の発動余地は限られる。景気が悪化した場合、景気を下支えできる手段はほとんど見当たらない。

 英国がEU離脱に傾くと、欧州の金融市場は大きく荒れるだろう。市場を統合し、需要を喚起するための欧州統合が崩壊したことへの失望が高まるからだ。

 そうしたリスクシナリオを防ぐためには、主要国の“協調”が不可欠だ。G7を中心に、各国が一時的な財政支出を許容し、需要の喚起を重視する姿勢を鮮明に打ち出すことが求められる。それが危機の波及を食い止めるために重要だ。

 しかし、5月の伊勢志摩サミットでも明らかになった通り、各国間の考え方の違いは大きく、協調体制を築くことは容易ではない。英国がEU離脱を選択するなら、各国の内向き志向はさらに強まり、協調は更に遠のくだろう。

 その中で、世界的な金融市場の混乱が発生すれば、1930代のような厳しい景気後退に陥る懸念が残る。国民投票が実施される23日に向けて、投資家のリスク削減が進み、金融市場が不安定になる可能性にも注意が必要だ。