障害の定義が狭い日本では
福祉も守ってはくれない

藤田 中村さんの役割で大切なことは、厳しい現状を繰り返して発信してくれることだと思います。例えば、隠れた障害のある人に障害者手帳を取る支援がないかと、考えることが山ほどある。今、ようやく激安デリヘルで働く風俗嬢に対して、坂爪(真吾)さんが福祉の介入を始めた(風テラス)。僕らが見る限りでも、風俗で働く人のなかには、手帳を取って支援した方がいい方々がいるんですよ。

中村 集客が難しいデリヘルで、1万円を切る価格って安すぎるのです。下層風俗店では女性たちが最終手段のカラダを売っても、生活保護程度しか稼げないみたいな深刻な事態になっています。

藤田 実際、風俗業界を労働の場と認めてもらうことが大事だとも思いますし、労働法規の適用を求めるべきだとも思います。もう一方ではそこで働けなくなった人たちのセカンドキャリアも含めて社会保障の対象として、僕らは介入していければと思っています。日本の障害は定義が狭く、手帳を持っていないと障害と認められない。埼玉では、精神障害だと3級、知的障害だとC(最軽度)とかB(中軽度)、こうした方々が風俗業界にいたりする。B~Cは専門家が見ないとわからないです。支援対象になって生活や生き方が楽になるケースは、風俗業界にはたくさん埋もれているはずです。

中村 風俗嬢で厳しいのは、単身の中高齢の女性。本当に餓死するんじゃないかって追い詰められている人もいます。風俗で稼げなくて追い詰められている女性たちは、相談したら何か社会資源に引っかかるかもしれないんです。

藤田 それを、どう僕らが説得できるかですよね。本人が生活保護を嫌がることもあります。あとは、福祉事務所に行くと、過去の職歴を聞かれる。一応、法律的には虚偽申請をしてはいけないのですが、言いたくなければ言わなくてもいいことにはなっています。しかし、聞く側も対人援助のスキルが低いですし、基本的に公務員なのでエリート、相談者の状況が理解できないんですよ。

中村 福祉現場だけでなく、階層社会になって、上の階層の人たちが下の階層を理解できないという場面が増えましたね。もはや公的な機関も低学歴枠とか風俗嬢枠とかを作って採用していかないと、公的サービスが成立しないですよ。

藤田 うちのNPOでも、元ホームレスの方とか、介護施設で大変な思いをしてきた女性とかいます。その方々の方が、熱心に相談者の話を聞いてくれます。そういった当事者性のある方が福祉現場にはいませんから相談者からの信頼も弱い。実際に福祉事務所で断られた人たちがうちに来ています。まったく的はずれなことで相談者を返したりしている。

中村 水際作戦ですね。行政もお金がないだろうから、必死ですね。まさに福祉崩壊です。

藤田 意図的に「生活保護を受けるのはとんでもない」と植えつけながら、バッシングしています。このままいくと、税金を上げることになるから、どうやったって富裕層からの反対運動は大きい。下流老人の問題もそうでしたが、社会問題が出てくれば出てくるほど、財界を含めた、税を負担する層が困る。政治も反対側に付きますし、難しいです。もっと情報発信して、早めに困窮者を福祉対象にしていくことが大事です。ショック療法ですね。