なぜ、ハンサムで大金持ちでも幸せになれない?

 これについては、映画制作者のロコ・ベリックも同じ考えを持っている。ベリックは「感謝は幸せへの近道」と考えている。彼は自らの問いの答えを探すべく、何年もかけて世界中を歩き回った。その問いとは、「なぜ、一部の人は他の人より幸せなのだろう?」、そして「人はいまより幸せになることができるだろうか?」というものだ。

 その答えは、ベリックが撮ったドキュメンタリー映画「HAPPY」に見ることができるが、彼の重要な発見を一つ挙げると、「家族や友人、コミュニティの一員であるという意識や、趣味に興じたり新しいことを学んだりして得られる単純な喜びなど、基本的なことに価値を置き、大事にしている人のほうが幸せを感じている傾向がずっと強い」ということだ。

  幸せに関するベリックの疑問は、映画をつくる前から少しずつ醸成されてきたものだ。最初の「なぜ?」は18歳のときだった。モザンビークの内戦で難民になった人たちのために資金を集めようと、グループでアフリカ旅行をした際のことだ。「難民たちは相当な被害を受けていました」とベリックは言う。

「ところが私たちが現地に到着すると、だれも惨めな顔もせず、怒ってもいませんでした。みな生きる喜びに目を輝かせ、ボールペンを目にしたり手品を見たりといったほんの小さなことに大喜びしてくれました。そこには、私の多くの友人たちが置き忘れてきてしまったような、純粋な感情の爆発がありました」

 ベリックの疑問は次のようなものだった。

なぜ、ほとんど持ち物もなくとてつもない苦しみを背負った人たちが、もっと幸運な人たちよりも幸せそうなのだろう?

 その後何年も経ち、ベリックがハリウッドで働いているとき、同じような疑問を抱いた友人がいた。ハリウッドの映画監督、トム・シャドヤックだ。

「アメリカ人は比較的豊かな生活を送っているのに、経済的に貧しい国の人たちよりもなぜか幸せを感じていない」という新聞記事をシャドヤックは読んでいた。「それで、トムは言ったのです。『これは個人的にもよくわかる。僕のまわりにも、才能があってルックスもよく、運に恵まれ、健康な映画スターたちがいっぱいいるけど、うちの庭を管理してくれている庭師のほうが幸せなんだ』と」。これを聞いて、ベリックには新しい疑問が浮かんだ。

美しく、才能に恵まれ、お金のある映画スターでも幸せでないのなら、いったいどうなれば幸せなのだろう?