彼女の最初の復讐は「あること、ないこと」を言いふらすことでした。例えば、哲也さんに騙された、結婚を反対された、お金を出さない、ハラまされて子どもをおろした、など。彼女は明らかな虚言を、あちらこちらで告げ口したようなのです。もちろん、それらは事実無根ですが、彼女の陰口が、施設に出入りしている祖母の耳に入るのではないかと哲也さんは気が気ではありませんでした。

「噂の域を出ないのなら、何もせず様子を見ましょう」

 私は哲也さんをそう諭しました。もし彼女が本当に愉快犯なら、哲也さんが連絡してきて、「やめてくれ」と懇願するのを待ち構えているはず。そんなところに飛び込んでは、彼女の思う壺です。今はとにかく、彼女の怒りが冷めるのを待つしかありません。しかし、哲也さんは、彼女の仕組んだ罠に、まんまと引っかかってしまい、とんでもないことが起こったのです。

「俺の家の前にいつも同じ車が停まっているんです。白色の軽、側面には『安心介護の田中サービス』の文字が。彼女の職場です。毎週水曜と日曜の18時頃には必ずといっていいほど、駐車していました」

 哲也さんははじめのうち「うちの近くでも、田中サービス来てるんだ」と気にも留めなかったんですが、どうも車中に人の気配があるのを察知したそうです。エンジンをつけたまま、こそこそと携帯で長電話している人がいるのを見て、哲也さんはなんとなく「嫌な感じ」を覚えたのです。「もしかして彼女なんじゃないか」と。

「いや、でも俺たちはきちんと別れたんだし、まさか家まで乗り込んでくるとは思えない。ちょっと考えすぎなんじゃないか」

 哲也さんはこのとき、なるべく楽観的に考えようとしました。しかし、彼女が今までやらかしてきた数々を思い出すと……哲也さんはブルブルと寒気がして、その車の存在が、やたらと不気味に思えてきたそうです。

 そこで哲也さんは一度、車のそばに近寄り、腰をかがめて、車中を覗こうとしたのです。そうすると、車はいきなり急発進して、黄色信号も気にせずそのまま逃げ去ってしまったそう。「やっぱり、そうなんだ」と哲也さんは確信を持たざるを得ませんでした。

決死の行為が裏目に
暴行罪で現行犯逮捕?

 それからの哲也さんは、挙動不審になっていました。どこに彼女が隠れているのか、後ろをつけてきているのか、不安で不安で仕方がなかったそうです。哲也さんには、キョロキョロとあたりを見回す癖が、知らず知らずのうちについていました。

「何で俺がこんな目に遭わないといけないんだ。今度、見つけたら、タダじゃおかない。ガツンと言ってやるんだ」

 哲也さんは彼女が隠れている現場を押さえれば、この件は終わると信じていました。早くこの異常な環境から抜け出したい、その一心でした。

>>後編『DV加害の濡れ衣で逮捕!別れを拒むモンスター彼女の恐怖の罠(下)』を読む