あれもダメ、これもダメ…
新入社員研修の害悪

 しかし、伝え方が決定的にマズい。いずれも、否定形で説明されているのだ。あれをしてはいけない、これをしてはいけない…。ネガティブオンパレードである。

 これでは、せっかく児童や生徒の時代にスキルを伸ばすことの喜びを知ったり、意欲を自ら高めようとする気持ちを持ったりしていても、そうした良いリソースを木っ端みじんに粉砕ししまう。

 新入社員研修は、枠組みと組織に倣うことをことさら強調する、悪しき儀式となっているのではないだろうか。「社会人とはそういうものだ」という諦観を浸透させて、新入社員をいわば飼い慣らしていくためには、最初にガツンと言っておかなければならないと考える、多くのマネジメントがもたらした結末である。

 ネガティブオンパレードは、研修担当者の自己防衛本能により、さらに増長される。新人が配属された部門から、「配属された新人がルールをわかっていない」「勝手なことをしている」「研修の仕方が生ぬるいのではないか」といったクレームが届くことはよくある。

 それに対して、「研修では、このように、してはならないことをしっかりと説明しています。それを守らない新入社員がいけないのです」と抗弁するために、ネガティブオンパレードが加速する。それが代々受け継がれて、しまいには針も通らぬほどの完璧な「べからず集」が完成する。

 これを変えようという問題提起も行動も、人事部はおろか、社内のどこからも生まれない。しかし、ただでさえヤル気に欠ける新入社員が増えている今、こんなやり方をしていれば、ますます悪循環に陥るのは、日の目を見るより明らかだ。キャリア形成と能力開発を実現するための人事部が、そのストッパーになっているトンデモな事態を解消しなければならない。

※社名や個人名は全て仮名です。本稿は、個人の見解であり、特定の企業や団体、政党の見解ではありません。画像はイメージです。