世論は大きく揺らぐもの
多数決による国民投票の問題点

 一国の将来を左右する事項を、多数決による国民投票で決めることは最適な方法なのだろうか。多数決は、これまでの民主主義を支える重要な方法論の一つだった。しかし、EU離脱決定後の英国を見ると、多数決による民主主義が最適な方法なのか疑問を禁じ得ない。

 一般的に、世論は大きく揺らぐことがある。一時の熱狂や雰囲気、投票時の天候など様々な要因が影響する。今回の英国の国民投票でも、離脱主張の代表格であるボリス・ジョンソン前ロンドン市長は、移民や難民が英国に押し寄せ、雇用や社会保障、治安を脅かすと世論に恐怖心を植え付けた。

 離脱派の政治家は、“主権を取り戻せ”とのスローガンの下、ドイツを中心としたEUから、大英帝国の栄光を取り戻そうと呼び掛けた。欧州の経済が財政危機、その後の低迷に陥っただけに、世論は「今よりも少しは良い未来があるかもしれない」と離脱派の主張に乗せられてしまった面は大きい。

 EU離脱の決定を受けて、イングランド、北アイルランド、ウェールズ、スコットランドから成る「グレートブリテン」は大きく揺らいでいる。スコットランドはEUに残留する意向を表明しており、その延長線上に独立が視野に入る。

 北アイルランドにも、そうした動きが出ている。そうした動きが現実のものになると、英国そのものの形が変わってしまうかもしれない。

離脱派は虚偽の主張で
世論を煽った!?

 離脱決定後、離脱派である英独立党のファラージュ党首は、「EU財政への拠出金をカットしても当初の主張の通り国民医療サービス(NHS)の財源が確保できるわけでない」とあっさりと認めた。つまり、離脱派は虚偽の主張を繰り広げ、世論を煽ったということになる。

 そうした状況が明らかになるにつれ、英国民の多くがEU離脱の決定を後悔し“レグレジット”(Regrexit:後悔とEU離脱をかけた)なる造語まで出ている。この状況は、1回限りの多数決で重要事項を決める危うさを示している。

 国のリーダーは、より長期の視点で国政に臨むことが求められるだけでなく、国民が適正に意思表示ができるような工夫をすべきだ。それが、今回のような1回限りの過半数による選挙結果で十分だったとは考えにくい。より公平かつ客観的な判断を担保する仕組みが必要だろう。