さて、この信託受益権の受益者に登記されているのは、「A3JP Ginza6ML特定目的会社」なる法人だ。同じ社名で合同会社や一般社団法人も設立されており、登記上の住所は、いずれも監査法人グループのKPMGジャパンになっている。

 すなわち、実質的な所有者が正体を隠して、こうしたペーパーカンパニーを通じてビルを保有し、事務手続きをKPMGが代行しているわけだ。その実質的な買い手として、不動産業界関係者の間で取り沙汰されているのが、プルデンシャル生命だ。

 もっとも、ここまで特定されにくいスキームを用いているため「プルデンシャルがスポンサーを務める私募ファンドが保有している可能性も考えられる」(不動産業界関係者)という。

 取得額の坪単価については、3億~3億5000万円程度との見方だ。銀座2丁目にある地上13階建ての商業ビル「Gビル銀座中央通り01」は、日本リテールファンド投資法人が今年2月に坪あたり2億500万円で取得しており、これを上回ったとみられる。

 もっとも賃料については、一定程度下げたとしても、元々20万円超と破格だったため、高水準であることに変わりはないだろう。

 よって、買い取り額が高騰しても、一定程度の利回りが見込めるという計算になる。

肝心のアバクロが不振

 とはいえ、肝心のテナントであるアバクロの不振が指摘されて久しい。本国米国ではすでに若者の間での人気が凋落し、店舗を大幅に減らしている。

 日本でも、09年の銀座店オープン時には700人の行列ができたが、今では往時の勢いはまるでない。一時はブランドの特徴である香水のにおいを店外にまでまき散らし、銀座の地元商店会から不興を買って取りやめるなどトラブルもあったが、それも今は昔。

 加えて、中国人観光客を中心とした“爆買い”需要も去り、銀座の免税店では苦境も伝えられる。そこに降って湧いた今回の大物ディールは、絶妙の投資となるか、アベノミクスで生じた“銀座バブル”のあだ花に終わるのか。不動産市況の先行きが不透明になりつつある中、注目が集まっている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 岡田 悟)