「修羅場」の経験値が高い政治家が
リーダーとなる時代の到来

 小池氏が、たった1人で自民党を振り回せたのは、「修羅場」の経験値が高かったからだろう。「政界渡り鳥」と批判される小池氏だが、常に個人で戦ってきた強みがあるのは認めざるを得ない。政界入りは大政党のバックアップがあったわけではなく、日本新党という細川護熙氏の「個人政党」からだった。人気キャスターからの転身は、人生の大勝負だっただろう。

 また、2005年の郵政解散総選挙では、郵政民営化に反対して造反した議員と闘う「刺客候補」の第一号となり、兵庫県から落下傘候補として東京で立候補した。対立候補の小林興起氏は、当時テレビの討論番組の常連で知名度が高く難敵だったが、小池氏は真っ向から戦いを挑んで打ち破り、刺客としてのミッションを成功させた。

 小池氏は、細川氏、小沢一郎氏、小泉純一郎氏と、次々と権力者に擦り寄ったように言われるが、それだけではないはずだ。時の権力者の意を受けて、戦うべき時に戦い、勝ち抜いていくことで政界を生き抜いてきたのだ。

 男社会の政界で、世襲議員でもない小池氏が、女性初の防衛大臣、女性初の自民党総裁候補、女性初の自民党総務会長など、さまざまな女性初のキャリアを積み上げることは、並大抵のことではない。そんな、さまざまな修羅場の経験が、組織に依存せず1人で戦える小池氏の強さを作ってきたといえる。

 世界が、これまでの常識が全く通じないような激動の時代に入った今、日本的な年功序列の組織の論理の中で、静かに意見を言わず、上の指示に従い、順番が来るのを待っているような人材が指導的な立場になる時代は終わったと考えるべきだ。

 財政の問題、少子高齢化の対応、首都直下型地震への備え、そして東京オリンピックという大事業など、さまざまな難題を抱える東京を仕切る指導者は、日本的な「いい子」ではとても務まらない。小池氏の「人徳」や「政策志向」はともかくとして、まずは一人で修羅場に立ち向かう強さがある政治家が、東京都知事となったことを歓迎したい。

鳥越氏の個人的資質より、
民進党の党内ガバナンス崩壊が問題だ

 一方、野党共闘の統一候補として立候補した鳥越氏だったが、小池氏、増田氏の後塵を拝して3位に終わった。この結果は大惨敗だと断ぜざるを得ない。今回の都知事選は、野党陣営にとって、これまでにない好機であった。与党が分裂選挙になった上に、これまで実現しなかった野党第一党・民進党と第二党・共産党が統一候補を擁立できた。その上、前回の都知事選で100万票を獲得していた宇都宮健児氏も立候補を取り下げ、鳥越氏の支持を表明していたのだ。