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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機
【第23回】 2016年8月5日
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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

IoTはまだ「グリーンフィールド」
想像力の豊かな企業が勝つ

IoT時代を制するのは誰だ?

 さて、話はARMに戻りますが、この企業の強みは、コンピュータ・プロセッサのデザインで素晴らしい技術を持っていることです。

 でも、それはあくまでも今現在、スマホ時代の話。次のIoT時代に、スマホと同じように覇権を握ることができるとは限りません。どの企業にもチャンスはあります。もちろん、世界最大級の多国籍半導体メーカー、インテルも黙っていないでしょう。スマホでARMに負けたのは省電力性能が劣っていたからですが、その点の改善は進んでいます。ほかにも、AMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)やNVIDIA(エヌビディア)も、虎視眈々とIoT時代のチップの覇権を狙っています。

 ARMにしても、スマホやiPhoneが去年あたりからピークアウトになっていますから、IoTの世界に転換しなければならないのは同じです。

 IoTは「グリーンフィールド」、いわば草ボウボウの土地ですから、どんな花を咲かせるかは自由。今後、競争が激化するのは目に見えています。ARMが強すぎると、なかには「ARMでない」予想外の選択肢で差別化を図ろうとする強力なライバル企業が出てくるかもしれません。まさしく、クリエイティビティが勝負のポイントとなるでしょう。

日本は今、飛躍する絶好のチャンス

 いずれにせよ、近未来を支えるのは、ITでよりよい生活を実現させるというデジタルトランスフォーメーション型ビジネスモデルのグローバル企業でしょう。ソフトバンクグループの孫社長やJリーグの村井チェアマンのような人々が、未来を大きく変えていく。時には大胆な行動が批判されることはあっても、強力なリーダーシップが成功への原動力になると思います。日本の成長のためにも、こういうグローバル企業を応援したいですね。

 今の日本は世界各国に比べ、治安もよく、政治・経済も安定し、社会も熟成して人材も豊富です。さらに円高と、グローバルに打って出る環境が整っています。そう、日本企業には飛躍のチャンスが到来しているのです。

 だからこそ、経営者にはそのことに気づいてほしい。なにも一時のバブル期のような海外資産の買いあさりをしろと言っているのではありません。コア事業を強化するための海外事業の買収やノンコアな事業を売却して整理することを考えてみてほしいのです。目先の小さな改善ばかりに気を取られていると、とりあえず少しの間は生き残れるかもしれませんが、未来はありません。すべての経営者が第二の孫社長にはなれなくても、彼の考え方を知ることで、これからのビジネスの在り方を学ぶことはできるのではないでしょうか。

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齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。

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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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