「開会に間に合って良かった」
かなり際どかったリオ五輪

 8月5日、リオデジャネイロ・オリンピックが開幕した。連日、日本選手の健闘が伝えられる中、ブラジル在住の商社員の一人は「会場が開会に間に合ってよかった」と言ってほっとしていた。それほど際どかったようだ。

 オリンピックを開催することは、その国の経済を活性化させる大きなチャンスだ。競技場の設営などインフラ整備が進められることは、公共事業の増加などを通して成長を支える。

 他国の選手団の迎え入れや競技運営のためには、多くの企業、国民の理解と協力が不可欠だ。それは、「皆でオリンピックを成功させよう」という一国全体の連帯感や団結を生み、前向きな心理を社会全体に浸透させることにもつながる。

 ただ、今回のリオ・オリンピック開幕前のブラジルの経済・政治情勢を見ると、かなり厳しい状況に追い込まれていたと言える。経済成長がマイナスに落ち込み、治安の悪さや政治の混乱などが目立った。

 わが国でも2020年に東京オリンピックが開催される。ここで考えておきたいことは、何をもってオリンピックの“成功”を評価するかだ。端的に言えば、オリンピックが無駄なく効率的に進むことはもちろん、社会全体のまとまりや団結をも引き上げられたなら、それは成功と呼んでいいはずだ。

 今から42年前、東京でオリンピックが開催された。当時のわが国では高速道路や新幹線が整備され、国全体にエネルギーが満ち溢れていた。オリンピックを一つのきっかけに、わが国は高度経済成長期へとなだれ込んでいった。今となっては、古き良き時代だった。

中国経済の減速が原因となった
ブラジル経済の低迷

 先述した通り、近年のオリンピックの中でも、リオ・オリンピックはかなり厳しい状況で開幕したといえる。開会式に参加した各国首脳の数はロンドン・オリンピックの半分程度と言われ、世界最大のスポーツの祭典としては何とも寂しい。

 その背景として、ドーピング問題の影響を指摘する識者もいるが、開催国ブラジルの政治・経済の問題が大きく影を落としていることは間違いない。