8月3日に発足した第三次安倍第二次改造内閣。菅義偉官房長官や、麻生太郎財務大臣、岸田文雄外務大臣をはじめ、8人の閣僚を留任させるなど、変化の少ない安定志向の人事のように見える。だが、政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏によると、今回の内閣改造、そして同時に行われた党役員人事には、今後の安倍政権を考えるうえで見逃せない、いくつかのポイントがあるという。

安倍総理の寵愛を受ける
“タカ派”稲田朋美防衛大臣の起用

 まず1つ目の注目点は、政調会長だった稲田朋美氏の防衛大臣への抜擢だと、鈴木氏は指摘する。

“タカ派”稲田氏の防衛相起用や、“実力派”二階氏の幹事長就任など、今後の政局を左右する重要人事があった今回の内閣改造と党役員人事。しかし、一番の注目点は、農水大臣の椅子を蹴って閣外に飛び出した石破茂氏の動向だ  Photo: AFLO

「保守派の論客でもある稲田さんは、まだ当選回数は4回。本来なら入閣前の当選回数です。

 ですが、安倍総理の寵愛を受け、第二次安倍内閣発足以来、規制改革担当大臣、党政調会長とこれまで一貫して、陽の当たるポストを担ってきました。

 今回はさすがに1回休みになるかなと思いましたが、蓋を開けてみれば、防衛大臣という要職を担うことになり、さらに驚いています。防衛大臣は、安全保障に関する議論はもちろん、今後、憲法改正をめぐる議論の際にも、非常に重要なポストになります。

 また、これまで防衛大臣は、中国、韓国の反発を抑えるためにも、小野寺五典さんや中谷元さんなど、比較的ハト派の議員が起用される傾向にありました。ですが今回、安倍総理は、自分と近いタカ派の稲田さんの起用に踏み切りました。

 この思い切った人事には、稲田さんを自民党の総理候補、そして自らの後継者として育てていこうとする安倍総理の強い意志を感じさせるものがあります。

 そして稲田さん自身も、安倍総理の期待に応えようと、後継者としての政治家像をイメージして脱皮を試みています。その証拠に、防衛大臣就任直後の記者会見でも、自らの歴史観についての発言を避けるなど、将来を見据えて、政治家としての幅を広げようとしているのが伺えます。あまりにもタカ派な姿勢は、自分が総理大臣を目指す際に、自らの言動を縛る要因になってしまいますから、今後もその場に応じて発言など使い分けていくことでしょう。8月15日の終戦記念日の靖国神社への参拝も見送る可能性が高いと思います」