赤ちゃんを「真っ二つ」に切るという解決策
若くして王位を継いだソロモンは、自分の判断力の確かさを世に知らしめたかった。やがてそのチャンスがめぐってくる。二人の売春婦が争いの裁きを求めて、彼のもとに赤ちゃんを抱えてやってきたのだ。
二人は同じ家に暮らしていて、数日ちがいで男の子を産んだ。一人めの女が言うことには、二人めの女は赤ちゃんを死なせてしまい、「真夜中に起きて私のそばに寝ていた息子を盗み、代わりに死んだ赤ちゃんを私の胸に抱かせたのです」。二人めの女はこれに異を唱えた。「何を言うの、生きているほうが私の息子で、死んだのはあなたの息子でしょう」
どちらかが噓をついているのは明らかだが、いったいどっちだ? ソロモン王は生きている赤ちゃんの母親をどうやって見分けたのだろう?
「剣をここにもってきなさい」と彼は命じた。「生きている子を真っ二つに切って、半分を一人に、ほかの半分をもう一人に渡すのだ」
一人めの女は、どうか子どもを傷つけないでください、赤ちゃんをその女にあげてくださいと、泣きつかんばかりに懇願した。
だが二人めの女は、王の解決策を受け入れた。「そうすれば、その子は私のものでもあなたのものでもなくなるでしょうよ」と彼女は言った。「どうぞ切ってくださいな」
これを聞いたソロモン王は、直ちに一人めの女に有利な裁きを下し、「この子を生かしたまま、一人めの女に与えよ」と申し渡した。「その女がこの子の母親だ」。聖書によれば「イスラエル人はみな王の裁きを聞いて(中略)正しい裁きを行うための神の知恵が王のうちにあることを知った」とさ。
ソロモン王には生みの母がなぜわかったんだろう?
赤ちゃんを切り分けるなんて案を受け入れるほど非情な女は、他人の赤ちゃんを盗むほど非情なんだろうと推論したのだ。それに本当の母親は、自分の子が殺されるのを見るくらいなら、あきらめるほうを選ぶはずだ。
ソロモン王は罠を仕掛けて、罪を犯した者と罪なき者が自分から分かれるように仕向けたのだ。