ヴァン・ヘイレンがおやつにm&m'sの茶色を禁じた理由

『ヤバい経済学』で世界の話題をかっさらったシカゴ大学の「鬼才」経済学教授スティーヴン・レヴィットとダブナーのコンビによる、柔軟な思考の教科書『0ベース思考』。本書には大量にユニークかつ切れ味鋭い思考の実例が詰まっているが、その中でもロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のボーカル、デイビッド・リー・ロスのエピソードがいま、SNS上で大きな話題となっている。デイビッド・リー・ロスは、バンドがツアーをする際の契約に、なぜか「スナックにはm&m'sを含めること(ただし、茶色を入れてはならない)」という条項を入れていたというのだ。そのあっと驚く「賢明」な理由とは? エピソードの詳細がよくわかる部分を特別に公開する。

古代のソロモン王と現代のロックアーティストの共通点

 ソロモン王は、エルサレムの第一神殿を築いた人で、知恵者として国中にその名を知られた。

 デイビッド・リー・ロスは、ロックバンド「ヴァン・ヘイレン」のボーカリストで、度を越した気分屋として、国中にその名をとどろかせた。

 二人のあいだに、いったいどんな共通点があると思う? 選択肢をいくつか挙げてみる。

1.二人ともユダヤ人だ。
2.二人とも女性にモテモテだった。
3.二人とも全米1位のヒット曲の作詞を手がけた。
4.二人ともゲーム理論を実践した。

 じつは、4つとも正解だ。それぞれを裏づける事実を挙げると……

1.デイビッド・リー・ロスは、1954年にインディアナ州ブルーミントンのユダヤ人の家庭に生まれた。父のネイサンは眼科医だった(デイビッドが歌にめざめたのは、ユダヤ教の13歳の成人式にそなえて歌の練習をしているときだったという)。ソロモン王は紀元前1000年ごろ、ユダヤ人の家族に生まれた。父のダビデも王だった。

2.デイビッド・リー・ロスは「パンティに足を2本入れてるかわいい子全員と寝た」と豪語した。「片足の子とも寝た」とまで言っている。ソロモン王は、聖書によると「多くの異国の女を愛し……700人の王妃と300人の側室がいた」。

3.デイビッド・リー・ロスは、全米1位の大ヒット曲「ジャンプ」を含む、ヴァン・ヘイレンの曲のほとんどを作詞した。ソロモン王は旧約聖書の正典である箴言、雅歌、伝道の書の全部か少なくとも一部を著したとされるが、フォークシンガーのピート・シーガーは、伝道の書の数節を「ターン・ターン・ターン」の歌詞にした。この曲はザ・バーズが1965年にレコーディングして、全米1位を獲得した(原注:ソロモンとロスの奇妙な共通点をもう一つ。どっちの全米1位のヒット曲のタイトルも、動詞の命令形一つでできている)。

4.二人の有名な逸話には、フリークみたいに考えたい人が真似するといい、戦略的な考え方が隠れている(フリークとは、常識の枠に収まらない人、既存の慣習にとらわれない人のこと。「フリークのように考えよう」というのが本書の主要コンセプト)。