昨年、SNS上の“あるある”を取り締まる漫画「フェイスブックポリス」で、彗星の如く現れ、糸井重里氏、堀江貴文氏、はあちゅう氏からも絶賛されているかっぴー氏が、このほど『SNSポリスのSNS入門』を上梓。

そこで、SNS黎明期から情報発信を続けてきたジャーナリストの佐々木俊尚氏と、昨今のSNS文化をテーマに語り合っていただきました。

今この時代のSNSのあり方を鋭く切り取るかっぴー氏と、SNSの歴史にリアルタイムで立ち会ってきた佐々木氏。両名の対談からSNSの現状とビジネスパーソンのSNSとの付き合い方が見えてくる……!前後編でお届けします。

(編集:友清哲 写真:中野修也)

SNSが生み出した「過剰な承認欲求」

「ミクシィは永遠に続くだろうと思っていた」
時代とともに変わるSNSの世界

佐々木 僕は新しいサービスが始まると、とりあえずすぐにアカウントは作るようにしているんです。Twitterも2007年に登場して、すぐに登録しました。実際にちゃんと使い始めたのは2009年くらいで、Facebookがおそらく2010年前後。どちらも最初はユーザーが少なくて静かでしたが、2011年の東日本大震災を機に、爆発的に広まったんですよ。

SNSが生み出した「過剰な承認欲求」佐々木俊尚(ささき・としなお)
1961年、兵庫県出身。作家・ジャーナリスト。早稲田大学・政経学部政治学科中退。毎日新聞社、月刊アスキー編集部を経て2003年に独立し、IT・メディア分野を中心に取材・執筆活動を続ける。『レイヤー化する世界』『キュレーションの時代』『電子書籍の衝撃』など多数

かっぴー そうでしたよね。僕もTwitterを始めたのは2009年くらいでしたが、最初はフォロワーもあまりいないし、ほとんど活用できていませんでした。

佐々木 当時の鳩山由紀夫首相が、Twitterやブログでメッセージを発信し始めたところ、朝日新聞が「天声人語」の欄で、「そんなものは老後の楽しみにとっておいてはどうか」と噛み付いたことがありました。当時はまだそういう時代だったんですよ。

かっぴー なるほど。今では政治家がTwitterやるのは当たり前ですけど、当時はすごくチャレンジングなことだったんですね。

佐々木 それが震災を機に、SNSは連絡手段として生活に必要なものだと認知されたわけです。そして多くの人が使い始めると、自ずとスキルやノウハウ、やってはいけないことなどが固まってくる。今回かっぴーさんが書かれた『SNSポリスのSNS入門』は、そういった“あるある”が満載の本でした。勉強になるし、面白かったです。

かっぴー ありがとうございます!実際、そのあたりのルール的なことが曖昧な人にこそ、読んでほしいです。

佐々木 たとえばTwitterを見ていると、妙に説教臭いおじさんなどが目につくじゃないですか?そういう人のプロフィールには、たいてい「つまらない世の中を面白く生きる」といったことが書いてあって、下手をすると「恋人募集中」と添えてあったりする(笑)。そういう“あるある”がたくさん凝縮されていた印象ですよ。

SNSが生み出した「過剰な承認欲求」かっぴー
1985年、神奈川県出身。漫画家。株式会社なつやすみ・代表取締役社長。武蔵野美術大学卒業後、東急エージェンシーのクリエイティブ職に就く。その後、面白法人カヤック勤務を経て、2015年から漫画の執筆を開始。大反響を呼んだ「フェイスブックポリス」を皮切りに、「おしゃ家ソムリエおしゃ子!」「左ききのエレン」など話題作を次々に発表

かっぴー ああ、よく見かけますね(笑)。それにしてもSNSの移り変わりというのは感慨深いです。僕はTwitterを始める前はmixiをやっていたんですが、当時は「mixiは永遠に続くだろう」と本気で思っていました。まさか、これほどあっさり他のツールに取って代わられることになるとは……。

佐々木 ちょうど最近、たまたまmixiの話題を見かけたので、久しぶりにログインしてみたんです。最後の更新が2010年で、なんだか凍りついた時間を見たような気がしましたよ。マイミクの中に、いまだにmixi日記を更新している人がちらほらいることにも驚きましたが。

かっぴー ああ、いますいます!あれは一体どういうつもりなんでしょうね。もうほとんど読まれていないはずなのに、よく続けられるなあ。

佐々木 廃墟の街を旅している途中で、かつての旧友に出会ったような気分でした。

かっぴー 「お前、まだここに住んでたのか!」みたいな(笑)。

佐々木 サービスの移り変わりによって、そういった現象は今後も起こり得るでしょうね。つい先日、ニフティが長らく提供してきた「@niftyホームページ」を、新サービスへの移行に合わせて閉鎖しましたが、その前にかつての自分のホームページを見てみたら、やはりまだ存在していて。2002年当時に書いていた日記が、そのまま塩漬けにされていました(笑)。

コミュニティができてからルールやマナーは生まれる

かっぴー こういう昔のSNSというのは、卒業アルバムに近いものだと思うんですけど、実際にはアルバムよりもっと“生”なものなんですよね。飾り気のない日常がそのまま保存されていて、今になって読み返すと、なんとも言えない不思議な感覚に陥ります。

佐々木 きっと今の30~40代が、70歳くらいになった時にFacebookを見てみたら、同様に不思議な感慨を覚えるでしょう。