かっぴー 想像もつかないですけど、Facebookはこの先いつまで存在するんでしょうか。
佐々木 Facebookは、世界で10億人以上のユーザーを抱えているわけですから、そうそうなくなることはないはず。ただ、今の形のまま50年後も使われているとは思えませんから、きっとAR(拡張現実)やVR(仮想現実)などと融合していくんでしょうね。
かっぴー うーん。その頃、人々はSNSをどう使っているのか。他のユーザーと、どのようなコミュニケーションを取っているのか。興味は尽きません。
佐々木 リアルの社会でも、見知らぬ人がそこら中に存在する環境が出来上がったのは、実は近代に入ってからです。日本でも、都市部に人が集まって暮らすようになったのはここ200年ほどのことで、コミュニティの中でのルールというのは、それ以降に育まれたものだと思うんですよ。
かっぴー なるほど。たしかにそうですよね。
佐々木 たとえば、レストランで隣のテーブルの料理がどれほど美味しそうでも、現代人はマナーとして、それをジーッと眺めたりはしません。しかし、18世紀くらいに初めてレストランという形が生まれた当時は、まだマナーもルールも存在していないわけですから、すべての客が無遠慮に他人の皿を注視していたのではないでしょうか。SNSの発展にも、同じことが言えるはず。
かっぴー 想像してみると、ルールがない状態というのは恐ろしいですね。今回の本でも描きましたが、全然知らない人に突然引用リツイートされたりするのも、レストランでたまたま相席した人が、勝手にこっちの話題に入ってくるのと同じことです。
佐々木 ああ、それも“あるある”ですよね。「フォロー外から失礼します」などと添えてリプライしてくる人、多いです(笑)。
かっぴー 結局、テーブルマナーというものは、レストランという業態が誕生して、しばらく経ってから確立したものなんですよね。SNSのマナーも同様なわけです。
有名インスタグラマーは1枚アップするために何百枚も撮る
佐々木 SNSは自己表現にも大きな影響を与えました。以前、編集者の菅付雅信さんが「ソーシャルがファッションを殺す」と発言されていましたが、まったくその通りだと思うんですよ。現代の若者にとっては、普段の自分を着飾ることよりも、SNSでキラキラして見えることのほうが重要で、それ以外の時はジャージ姿でも何でもいい。その結果、SNS上では全員が派手に着飾っていて、まるで竹下通りみたいになっている。
かっぴー そういう傾向は、とくにInstagramに顕著ですよね。「インスタジェニック」という言葉が生まれたように、とにかくインスタ映えする服を着てみたり、場所に行ってみたり。
佐々木 有名なインスタグラマーになると、1枚の写真をアップするために、何百枚、何千枚と写真を撮るらしいですからね。
かっぴー ホント、仕事でもないのに頭が下がります。そういうのも承認欲求のなせる技なのでしょうか。
佐々木 そうでしょうね。過剰な承認欲求です。
かっぴー でも、承認欲求というのは、キリがないですよね。永遠に満たされることなく、いつまでも続いてしまうかもしれません。だからこそ、たまに自分の言動を振り返ってみる必要がある。『SNSポリスのSNS入門』はそういう“答え合わせ”に使ってもらえると嬉しいですね。
(明日につづきます)