『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』(ダイヤモンド社)の著者・西岡壱誠氏と『現役東大生が伝えたい やってはいけない勉強法』(学研プラス)の著者・綱島将人氏による現役東大生対談最終回。
今回は、参考書の使い方や選び方、そして具体的に“使える”参考書を伺いました。今日から使える情報が満載、学びの悩みを抱えるすべての方必見の対談をお届けします。

参考書は「仮説」を信じて選ぼう

――無数にある参考書の中から、お二人はどのような情報を参考に教材を選びましたか。

現役東大生が教える、本当に“使える”参考書はコレだ綱島将人(つなしま・まさと)
大学受験学習塾STRUX主宰、株式会社ONER取締役、東京大学教養学部2年(2017年3月)。神奈川県立トップの進学校に進学するも、入学時の成績はビリから数えた方が早かった。平日5時間、休日13時間の勉強を経て、独自の逆算メソッドを完成させ、1年間で学年トップにのぼりつめる。高校2年生時は同高校の理系トップを維持するも、将来の夢から文転を決意。文系でも学年トップに位置した。その後、東京大学文科2類に現役合格。著書に『現役東大生が伝えたい やってはいけない勉強法』がある。

綱島 私は「王道」といわれる参考書の中から選ぶようにしていました。過去の合格者が多く使ってきたものは、内容の精度が高いだろうと思ったからです。インターネットで調べたり、予備校の先生に聞いたりして情報を収集しました。英単語の王道の参考書は、『ターゲット1900』(旺文社)、『システム英単語』(駿台文庫)、『速読英単語』(Z会)などいくつかあるので、目星をつけて書店に行き、内容を確認しました。
 正直、どの参考書でも受かる人もいれば、どの参考書でも落ちる人はいます。重要なのは、それに対する意味づけができるかどうかです。「これ以外の参考書は駄目だ!」と思うくらいの理由をつけて使い続けることが大切です。
 たとえば、『速読英単語』であれば、英文が載っていて、それに付随した単語が掲載されているので、入試の設問に近い状態で単語を覚えられるお得な単語帳だと意味づけられます。

西岡 確かに、意味づけをして、その教材の力を信じないと、他の人が使っているものに目移りしてしまうことがありますよね。私は学校や塾で取り上げられた参考書はまず入手するようにしていました。
 他の観点としては、高校1年生、2年生の段階では数学の『青チャート』、『赤チャート』、『黄色チャート』(数研出版)などレベルに合った教材を選ぶこと。高校3年生になり志望校が見えてきた段階では、志望校対策になるものを選ぶことです。これは、それぞれの大学によって出題傾向が大きく異なるからです。特に英語は顕著で、東大を目指す人はこういう英単語を覚えておかなければいけない、医学部を目指す人は医療系の単語が必要という傾向があります。また、自分の弱点が見えたら、弱点克服に重点を置いて参考書を選ぶという方法も一つです。

綱島 東大に合格した先輩に尋ねることもありました。その際は、自身が使っていたものだけでなく「周りの人が何を使っていたか」も教えてもらいました。なぜその参考書を選んだのか意味づけも聞くようにし、意味づけに納得できなければ、購入はしませんでした。

オススメの参考書はズバリこれ!

――1教科あたり参考書は何冊買っていましたか。

綱島 参考書は、分野ごとに1冊で足りると思います。例えば、英単語で1冊、英文法書で1冊という感じです。参考書の見極めのポイントは2つです。1つは、網羅性。1冊で入試範囲のすべてをカバーしている必要があります。もう1つは、解説がしっかり載っているかどうか。参考書によっては、薄い作りになっており、学習者が達成感を得やすいものもあります。それも意味はありますが、暗記すべきものの背景説明や理論の解説を減らすべきではありません。解説が薄いと暗記ははかどりませんし、論述的な入試には対応しにくくなります。

西岡 私は、メインで使う参考書は1冊にしながらも分野ごとに複数冊の参考書を持っておいてもよいと思います。数冊をリンクさせながら学んでいく方法が有効だからです。
 例えば、世界史の記述問題を解いた際に、別の参考書で同じ年代についての問題を同時に解いていくことで学びが深まります。東大の入試問題の参考書はたくさんありますが、参考書によって同じ分野であってもアプローチが違っていたり、形式を変えていたりします。解ける幅が広がりますし、一問だけでは理解が不完全な場合に、別の視点から解くことで効果的に理解をしていくことができます。

――解説がちゃんと載っているものを選ぶということなどは、資格試験を受ける社会人などにも参考になる視点ですね。では、具体的にお二人がお勧めする参考書を教えてください。

西岡 適性があるので、すべての受験生にお勧めできる万能な参考書はありませんが、私は英文法の『総合英語 Forest』(桐原書店)がお勧めです(*2016年で一旦販売を中止)。他にも、有名な英文法の参考書はたくさんあり、それにより一時的に成績を上げることはできます。しかし、説明部分がかなりそぎ落とされて、短期的に点数が取れるように設計されているものが多いので、最終的に東大など難関大学を目指す際には不十分になることが多いのです。
 また、『解体英熟語』(Z会)は、難関大学レベルの英熟語をきちんと学べます。英熟語は、センター試験レベル、センターよりももう少し上のレベル、難関大学レベルという3つのパターンに分けられます。センターレベルは、誰もが絶対覚えなければいけません。他のレベルは、自分の必要に応じて覚えればよい。『解体英熟語』は、そうしたレベル分けをしながら学べます。さらに、間違えがちな英熟語と動詞・前置詞・副詞をセットで覚えられるようになっていることも気に入っているポイントです。

綱島 英語構文を扱う『英文解釈の技術100』(ピアソン桐原)は、解説が丁寧でお勧めです。英文法は、『基礎英文法問題精講』(旺文社)の1冊を完璧にこなせば、センター試験レベルから東大合格レベルまで対応可能です。例題があり、解説が続き、演習でしめる形式なので、非常に力をつけやすい参考書です。

――具体的な参考書のお話は、読者の方にかなり役立つでしょうね。参考書以外にも、これは持っておいた方がよいという学習教材はありますか。

綱島 英文法でいうなら、『ブレイクスルー総合英語』(美誠社)という英文法書。問題集というより、英文法について深く解説してあり、辞書的な使い方ができます。化学にもこのように辞書的に使える教材はあるので、1冊持っておくと便利でしょう。問題を解いているときに、解説が不十分な部分などを補っていくことができます。

西岡 問題を解きながら索引を引いて復習的に確認ができるものは有効ですよね。著書の中で、「予復習カウントゲーム」という学び方を紹介しています。予習したい教材と復習したい教材を机に並べて置き、予習しながら復習教材にリンクできる問題があればそちらも解きます。パラレルに学習を進めることで、定着率を上げることができます。そして、復習した数をカウントしていくことで、ゲーム感覚で学びを深められるのです。