『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』(ダイヤモンド社)の著者・西岡壱誠氏と『現役東大生が伝えたい やってはいけない勉強法』(学研プラス)の著者・綱島将人氏による現役東大生対談第3弾。
今回の対談テーマは、「勉強時間」をどううまく活用するか。有効な暗記法から、やってしまいがちな“無駄”な勉強方法をご紹介します。

暗記が苦手な人にも効果てきめん、
東大生の暗記術

――受験や資格試験に向けた勉強で、「暗記」は避けて通れません。しかし、「暗記が苦手」「暗記が面倒だ」と感じる人は多いものです。東大合格に向けて、お二人はどのように暗記をしたのですか。

西岡壱誠(にしおか・いっせい)
東京大学2年生。1996年生まれ。東大輩出者ゼロの無名校でゲームにハマり、落ちこぼれ、学年ビリに。偏差値35の絶望的状況から一念発起して東大を目指すも、現役・一浪と、2年連続で、箸にも棒にもかからず不合格。崖っぷちの状況で「ゲーム式暗記術」を開発し、みるみるうちに偏差値が向上。東大模試第4位になり、奇跡の東大合格をはたす。著書に『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』がある。

西岡 単語帳なり参考書なりを開く前に、「なぜ暗記をしなければいけないか」を思い返してみてください。それは、試験で点数を取りたいからですよね。そう考えると、効果的な暗記の方法が見えてきます。
 例えば、「end」という単語一つを暗記しても点数はのびません。「end」の反対語や熟語などを一緒に覚えることで、長文読解や英作文に対応できる英語力が身につきます。また、覚えられない単語は「My復習ノート」にまとめます。この「My復習ノート」には、解けなかった問題をまとめておくことも有効です。

綱島 西岡さんが言う通り、記憶の軸を作って暗記していくことは重要ですね。意味づけをすることで、途端に暗記はスムーズになるものです。「この単語とこの単語はつながっている」という覚え方をすることで、脳に定着しやすくなります。木の幹に枝葉をつけるイメージになるので、効率よく暗記がきます。
 また、アウトプットの数を増やすことも重要です。「インプット2割:アウトプット8割」ほどの割合で考えるとよいでしょう。インプットばかりに時間を使っても、効果的に暗記はできません。覚えたらすぐにテストをすることがポイントです。

西岡 記憶の幹を活用して、教科の枠を越えて覚えてしまうのも有効です。私が著書で伝えたのは、「漢字⇔英語トランスレイトゲーム」です。漢字を覚える時に、英単語や古語もあわせて覚えます。時間も効率的に使えますし、一石二鳥ですね。

受験生がおちいりがちな“無駄”な勉強方法

――有効な勉強法がある一方で、受験生がおちいりがちな無駄な学習の仕方はありますか。

西岡 暗記の話の流れで言うと、単語を1から100まで丸暗記することは、時間を効率的に使えているとはいえません。この単語は覚えているから「○」、この単語は忘れているから「×」などの情報を書き加えていったり、派生語や反意語を一緒に覚えていったりすることで効果的に暗記することができます。

綱島 あとは、自分で綺麗なノートや単語帳を作ることは無駄の大きい作業だと思います。自分で作るよりもずっと網羅性が高く、綺麗な単語帳や参考書が売っています。

西岡 その通りですね。私が伝えたいのは、「努力と苦労は違う」ということです。自習室に誰よりも長くこもっていることや、綺麗で膨大な量の単語帳を作ることは苦労ではあります。しかし、結果の伴う努力とは限らない。私はまさに苦労ばかりして、努力ができず、入試に落ちたという失敗体験があります。効率と効果を考えて勉強するという視点は欠かせません

綱島 効率的な勉強の仕方というのは非常に大切な視点ですよね。必ずしも「無駄」ではないのですが、受験生の中には日本史や世界史の細かいことまで覚えることに固執して、歴史オタクみたいになってしまう人がいます。入試において、歴史科目は総じて配点が高くありませんし、最初の頃は得点の上がり幅が大きいものの、後半は重箱の隅をつつく知識を得ていくしかないので、上がり幅はどんどん小さくなっていきます。配点の低い教科科目の勉強に時間を割くことは、受験勉強においては“無駄”です。
 歴史の勉強に没頭するのは教養としては素晴らしいことですが、受験で勝つためには実は英語と数学に時間を割いた方がずっと効率的なのです。

西岡 受験生の中には、得意科目を伸ばそうとそればかり勉強をする方もいますよね。しかし、30点だったのを60点まで上げるのと、60点を90点にまで上げるのとでは、60点を90点に上げるほうがずっと難しいのです。少し考えると苦手科目に時間を割いた方が効果的だということに気づくはずです。

綱島 論理的に考えて、学習計画に落としていかないと無駄が多くなってしまいますね。