『現役東大生が教える「ゲーム式」暗記術』(ダイヤモンド社)の著者・西岡壱誠氏と『現役東大生が伝えたい やってはいけない勉強法』(学研プラス)の著者・綱島将人氏による現役東大生対談第2弾。
今回の対談テーマは、「勉強時間」。受験を控える学生はもちろん資格試験などに臨む社会人も知っておきたい、適切な勉強計画の立て方や効果的な勉強時間の使い方について聞きました。
勉強計画は必要?
――受験生や資格試験前の社会人など、「勉強したいのは山々だけれども、時間が限られている」という方は多いと思います。こうした方へのアドバイスをお願いします。
大学受験学習塾STRUX主宰、株式会社ONER取締役、東京大学教養学部2年(2017年3月)。神奈川県立トップの進学校に進学するも、入学時の成績はビリから数えた方が早かった。平日5時間、休日13時間の勉強を経て、独自の逆算メソッドを完成させ、1年間で学年トップにのぼりつめる。高校2年生時は同高校の理系トップを維持するも、将来の夢から文転を決意。文系でも学年トップに位置した。その後、東京大学文科2類に現役合格。著書に『現役東大生が伝えたい やってはいけない勉強法』がある。
綱島 まずは学習計画を立てることが重要です。特に、年間や月間の中長期計画は絶対に必要でしょう。計画表という指標がないと、目標達成につながらない空回りな努力をしてしまう可能性があるのです。計画表があれば、「この参考書を受験までに3回繰り返す」と考えた時に、どのくらいのペースで進めていかなければ終らないのかということが計算できるようになります。理想のペースがわかれば、それを下回っているか否かを把握できます。多くの受験生は、自分の勉強ペースが適切かわからないまま暗中模索で学習を進めてしまっているのです。
西岡 非常に合理的ですね。時間は有限ですから、ゴールから逆算してすべきことに集中していかないといけませんよね。しかし、もしかしたら多くの学生がそこまではできないと感じるかもしれません。実際に私自身も現役時代は、難しかったです。
そんな私が工夫したのは、計画表の中に「自由に学ぶ時間」を設けておくことです。私の場合、綱島さんのようにシステマティックにできなかったので、きっちりした計画を立てることに力を入れるのではなく、「宿題ができていない」「模試に向けた準備が足りない」などに対応できる時間を設けておくことにしたのです。
――なるほど。計画通りに勉強ができない人は、自由な時間を設けておけば、足りない勉強を補っていくことができるのですね。綱島さんも計画の見直しは行いましたか。
綱島 はい、計画表の見直しは定期的に行います。勉強計画を見直す際、受験生は「不安だから」という感情で計画変更をしてしまうことがほとんどです。しかし、感情的に変更すると学力がつくスケジュールにはなりえません。論理的に修正するポイントは、あらかじめ計画を見直すタイミングを定めておくことです。例えば、2週間に1回や模試の結果返却のタイミングで行うなどと決めます。2、3日ごとに計画を修正しては、学習実績のサンプル数が少ないためにあまり意味があるものにはなりえません。
西岡 注意すべきことは、当初の計画にないことをしようと思ったとき、新たな参考書や問題集など「新しいこと」に手を出してしまうことです。しかし、学習に重要なのは新しいものをはじめることではなく、徹底した復習です。ほとんどの人間は、1回では覚えられないので復習の時間を確保することは欠かせません。「復習時間」を確保することと、「この参考書を3回復習する」など明確な復習目標を立てておくこと。
そして、復習に挙げた項目が達成できたらチェックします。これにより、達成感を得られます。ゲーム性を入れることで、淡々と計画をこなすだけではない楽しさが生まれるはずです。
「勉強に時間がかかる」という悩みへの処方箋
――「勉強に時間がかかる」という悩みを抱えている方は少なくないと思います。お二人は、そんな方にどうアドバイスをしていますか。
西岡 正直に言うと、「時間がかかること」自体は問題ではないと思います。他人よりも参考書1冊を読むのに時間がかかるならば、そのぶん他の人よりも1冊から多くの情報量を得ているはずです。実際に、他の人が10冊の参考書を読む間に、1冊を徹底して学ぶことで成績が上回ることもあるのです。集中せずにダラダラと時間をかけていては意味がありませんが、決して短期間に大量にこなすことがよいわけではないと思います。
綱島 どうして時間がかかっているのかを見極めることが重要だと思います。西岡さんが言う通り、時間がかかることが問題なのではなく、非効率な部分に時間をかけていないかを見極めることがポイントです。入試でも資格試験でも同じですが、設問は3パターンに分類できます。私は、テストを開いて最初の5分~10分でそれをざっと見極めます。1つ目は天才だけが解けるような超難問、2つ目は平均的な合格者が解けるレベルの問題、3つ目がほとんどの受験者が解けるだろう問題です。2つ目と3つ目は解けなければいけませんが、1つ目にいくら時間をかけてもほとんど意味がありません。入試は6割程度解ければ合格することが多いですし、資格試験も6、7割で合格することがほとんど。
つまり、この優先順位の見極めを学習にも落とし込んで考えればよいのです。例えば東大の個別学力試験でも、リスニングと英作文は比較的短い対策時間で点数を取ることができます。他にも、英検 のライティングはある程度の型を覚えてしまえば、一定の点数が取れます。点数を取らなければいけない部分と捨てる部分を判断すること、ビジネスでいうとパレート法則(80:20の法則)のような考え方が重要なのです。