米国の雇用環境が改善するなか、パウエルFRB議長の苦難が続く理由米国の3月雇用統計では、雇用環境の改善が示された。景気全体も足元で停滞感が増しているが、内需の基調は底堅く、再び拡大傾向となることが見込まれる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

2月の「不安」から一転、
3月は雇用環境が着実に改善

 米国の3月雇用統計は雇用環境の改善を示す内容であった。景気全体も足元で停滞感が増しているが、内需の基調は底堅く、再び拡大傾向となることが見込まれる。インフレ圧力は徐々に高まる可能性がある。

 一方、2020年の大統領選挙が近づくにつれて、トランプ大統領はFRBへの関与を強めることが予想される。FRBは不安定な景気とトランプ大統領に挟まれ、難しい舵取りが求められるだろう。

 米国の雇用環境の改善ペースが鈍化したという懸念は、杞憂に終わったようだ。1ヵ月前に発表された2月の雇用統計は、雇用者数の増減を示す非農業部門雇用者数が1月から2万人(改定後は+3.3万人)の増加に留まり、2017年9月以来17ヵ月ぶりの低い伸びであった。

 しかし、4月5日に発表された3月雇用統計では、非農業部門雇用者数が2月から+19.6万人と、雇用環境改善の目安とされる+15~20万人の増加ペースに復した。

 業種別に見ると、製造業は自動車関連を主因に2017年7月以来20ヵ月ぶりの減少に転じた。他方、サービス部門は医療や宿泊・レジャーを中心に幅広い業種で雇用が増加し、サービス部門全体では+17万人と堅調に増加した。製造業と非製造業で状況が大きく異なることがうかがえる。

 また、3月の失業率は3.8%と2月から変わらず、歴史的低水準が続いている。正規雇用の仕事をしたいが経済的理由でパートタイム労働に留まっている者などを含む広義の失業率(U-6)も、2月と変わらず低水準であった。米国の労働需給は引き締まった状況が続いていると言えるだろう。