静岡鉄道の新型車両A3000系鉄道事業以外で連結売上高の99%以上を稼ぐ遠州鉄道グループと静岡鉄道グループ。しかし、鉄道は片手間かというと決してそうではなく、むしろ高いサービス水準をキープしている Photo:PIXTA

大手私鉄に準じる売上高ながら、鉄道事業が連結売上高の1%にも満たない不思議な鉄道会社がある。静岡県の遠州鉄道と静岡鉄道である。しかし、鉄道事業が片手間なのかといえば決してそうではなく、むしろ充実した事業展開をしている。今回はこのユニークな2社をご紹介する。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

過去最高益も
鉄道売上高は1%未満

 浜松市を拠点とする遠州鉄道と、静岡市を拠点とする静岡鉄道、静岡県を代表する二大私鉄グループが2019年3月期決算を発表した。遠鉄グループは、連結売上高が対前年度20%増の2138億円、経常利益は同31%増の62億円と3期連続の増収増益。一方の静鉄グループは、売上高が同2%増の約1762億円、経常利益が同27%増の約35億円と2期連続の増収増益で、ともに過去最高の売上高を記録した。

 両社は国土交通省の区分では「中小私鉄」に分類されているが、鉄道会社を中心とした企業グループとしては、完全民営化を果たした東日本・東海・西日本・九州のJR4社と大手私鉄16社に次ぐ規模を誇る。大手私鉄で最も規模の小さい南海電気鉄道の連結売上高が約2200億円、JR北海道が約1700億円だから、その存在感の大きさが分かるだろう。

 遠州鉄道と静岡鉄道に共通しているのは、事業規模に対する鉄道運輸収入の小ささだ。かつては遠州鉄道が4路線(約50km)、静岡鉄道が5路線(約100km)の大規模な路線網を有していたが、モータリゼーションの進展で順次廃止されていき、現在はともに1路線を営業するのみとなっている。鉄道運輸収入は遠州鉄道が約17億円、静岡鉄道は約15億円で、共に連結売上高の1%にも満たない。ちなみに南海は約600億円、JR北海道は約700億円だから桁違いだ。

 鉄道グループ会社における連結売上高に占める鉄道事業の割合は、新幹線を中心とするJR東海で約80%、鉄道事業の収益が小さく多角化を進めているJR九州で約40%。大手私鉄では、東京メトロを例外としておおむね20~25%、近鉄や東急など鉄道以外の規模が大きいグループでは15%弱になる。バスが主力の地方中小私鉄では10%を切る事業者も存在するが、1%未満は両社だけだ。では遠鉄グループと静鉄グループは、残りの99%をどのようにして稼いでいるのだろうか。