第3章

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 長い沈黙が続いた。しかし実際は、1分程度にしかすぎない。

 殿塚が顔を上げて総理を直視した。

「分かりました。自由党は私の責任でまとめます。法案の国会通過に協力しましょう」

 総理は思わず背筋を伸ばした。殿塚は、表情も変えず続けた。

「さっそく党に持ち帰って出来る限り早い時期に、石崎党首との会談をセットします」

「ぜひお願いします」

 総理は無意識の内に頭を下げていた。

 ドアの外で声が聞こえ始めた。秘書がしきりに外を気にしている。マスコミが総理の姿が見えないことに気づいたのだ。

「部屋を出てください。私は後ほどゆっくりと」

 殿塚の言葉に総理はドアに向かって歩いた。

 わずか10分余りの会談だったが、これでいいのかと思うほど上手くいった。

 道州制とセットで考えると言ったとたん、殿塚の顔つきが変わった。殿塚が道州制の導入を長年訴え続けているとは聞いていたが、あれほどだとは思わなかった。

 いや、これはあの男だけが考えているのではない。時代の流れだ。国が巨大化し、国民の意識も広がった。乗り気でないのは官僚と選挙に弱い政治家だけだ。いや、もっとも手ごわいのは東京都民だ。彼らをどう説得するかがカギになるだろう。

「だが思ったより、上手くいくかもしれない」

 総理は低い声で呟いた。