核家族化が進む今日、子育てに悩むお母さんが急増している。
特に苦労するのが「男の子」。お母さんにとって女の子は、かつて自分が通ってきた道で理解しやすい面があるが、男の子の場合、未経験のことが多く、男の子の突飛な行動に日々悩むことが多いという。
このたび、『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』を刊行し、自らも2人の息子さんを育てた「脳科学おばあちゃん」久保田カヨ子氏(80)に、男の子を育てるにはどうすればいいのか、そのコツを伝授していただく3回連載企画。
第2回は、男の子を育てるときに、お父さんにしかできないことを語ってもらった。

「イクメン」に対する私の考え方

【第2回】<br />「イクメン」を自慢しとったらアカン!久保田カヨ子(くぼた・かよこ)
1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた独自の久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。 著書に、『カヨ子ばあちゃん73の言葉』(ダイヤモンド社)など。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたたない。

  最近、「イクメン」という言葉が流行っています。
  積極的に育児に関わるお父さんのことですが、なぜここにきて「イクメン」が脚光を浴びるようになったのでしょうか。

  これも、戦後の環境変化による部分が非常に大きいと私は思います。
  日本が高度経済成長を遂げていくなか、サラリーマンがどんどんお金を稼ぐようになりました。
  お父さんはがんばって外で働き、お母さんは専業主婦として子育てにまい進する毎日。仕事に没頭するお父さんの給料も手渡しから銀行振込になり、その影は徐々に薄くなって、「亭主は達者で留守がいい」という言葉まで出てくるようになりました。

  しかし、やがて専業主婦が、家計を支えるためにアルバイトや仕事を持つようになり、特に都市圏では共稼ぎへと移行する夫婦が増えてきました。
  そうなると、代々家々に伝承されてきた子育て法はどこかへ消えてしまい、高学歴・高齢出産の主婦も増え始め、育児が煩わしさを伴う義務めいたものと感じるようになって、少しずつ主婦の不満が蓄積していきました。「どうして、私ばかりが育児をしなければならないの? 男女同権でしょ」というわけです。

  男女同権。これは戦後、アメリカから入ってきた価値観の一つです。
  もちろん、それを否定するつもりはありませんが、戦後に女性が得た権利というものは、戦って得たものではなく、どちらかと言えば与えられたものといってもいいでしょう。
  もちろん、不当に女性が貶(おとし)められるようなことは、あってはなりませんが、ことさらに女性の権利を主張するばかりで、責任や義務ということの教育は根の浅いモノになってしまいました。
  こうして、「男女同権なんだから、あなたも育児に参加してよ」というお母さんが、どんどん増えていったのです。

  手間を惜しんでは、子は育ちません。ところが、楽な育児へとこびる商売人に乗せられ、子育てに関わる出費は増大の一途です。さらに母親ひとりではとても応じ切れない問題(子どもの心身の問題や自身の心の問題など)が起こり、父親の育児参加が社会的にも求められてきました。これが「イクメン」登場の背景です。