核家族化が進む今日、子育てに悩むお母さんが急増している。
特に苦労するのが「男の子」。お母さんにとって女の子は、かつて自分が通ってきた道で理解しやすい面があるが、男の子の場合、未経験のことが多く、男の子の突飛な行動に日々悩むことが多いという。
家族のなかに弟がいて、弟の面倒を見た経験があればなんとかなりそうだが、最近は少子化によって、その経験を持つお母さんたちも減っている。
このたび、『カヨ子ばあちゃんの男の子の育て方』を刊行し、自らも2人の息子さんを育てた「脳科学おばあちゃん」久保田カヨ子氏(80)に、男の子を育てるにはどうすればいいのか、そのコツを伝授していただく3回連載企画。
第1回は、お母さんの過保護が男の子にもたらす影響をストレートに語ってもらった。
道具と環境の変化が、
親と子のコミュニケーション不全を起こしている!
1932年、大阪生まれ。脳科学の権威である京都大学名誉教授・久保田競氏の妻で2人の息子の母。約30年前に、日本における伝統的な母子相伝の育児法を見直しながら、自身がアメリカ在住時と日本で実践してきた出産・育児経験をもとに、夫・競氏の脳科学理論に裏づけされた独自の久保田式育児法〈クボタメソッド〉を確立。テレビなどで「脳科学おばあちゃん」として有名。 著書に、『カヨ子ばあちゃん73の言葉』(ダイヤモンド社)など。ズバッとした物言いのなかに、温かく頼りがいのあるアドバイスが好評。全国からの講演依頼もあとをたたない。
子どもを育てるということの大変さは、いまも昔も変わりません。
ただ、大きく変わったものがあります。それは道具と環境です。
まず道具。子どもが使うコップの材質で考えてみます。
昔は、大人が使っているものと同じ陶器製やガラス製でした。
子どもの手にちょうどよい大きさの細くて深い陶器製の湯呑みや、ガラス製のコップは、高価なモノも安価なモノも、ちゃぶ台よりはるかに高くなったテーブルから落とすと割れてしまいました。
すべての母親が、「静かに、そーっと置くのよ」とその使い方を教えていたのは、何十年も昔のことになってしまったのです。
やがて、落としても割れないプラスチック製コップが出てきて、子どもの陶器製コップやガラス製コップの扱いは、みるみる下手になっていきました。
でも、よく考えてみてください。
落として割れるのが危ないというのであれば、落とさない使い方をきちっと教えればいいのです。
オムツもそうです。昔は紙オムツなんてありませんでしたから、母親は大変な苦労をしたものです。
たとえば、外出先でのオムツ替え。いまは紙オムツなので、くるくるっと丸めて持ち帰るか、トイレのごみ箱にポイっと捨てておしまい。しかも、吸収力に優れた素材を使っていますから、赤ちゃんのおしっこやうんちがオムツの外に出てしまうということも、ほとんどありません。
でも、布オムツを使っていた昔は、そうはいきません。
紙オムツのように手軽に片づけられないため、オムツ替えの大変さから逃れたい母親は、オムツが少しでも早く取れるように、トイレトレーニングを早くから一所懸命に行いました。
陶器製やガラス製コップの扱いも、トイレトレーニングも、親が子に“やらなくてはならないこと”として教えるとき、子は真剣に協力してくれたものです。ここには、親と子の大事なコミュニケーションが成り立っていました。