渋谷駅の新たな目玉として「渋谷スクランブルスクエア」東棟が11月1日に開業する。渋谷駅で鉄道を運行している東急、JR東日本、東京メトロは渋谷で新たな収益源を得ることになるが、渋谷再開発のメリットを享受するのは彼ら事業主体だけではなかった。(ダイヤモンド編集部 松野友美)

渋谷スクランブルスクエア全身で「風を感じる」屋上の展望施設がある渋谷スクランブルスクエアの外観 Photo by Tomomi Matsuno

 東京の渋谷駅に複合ビル「渋谷スクランブルスクエア」の東棟が11月1日に開業した。東急とJR、東京メトロの渋谷駅の真上にそびえ立つ地下7階、地上47階建ての高層ビルで、高さ約230メートル。

 日本の高層ビルの中では群を抜いて高いわけではないが、渋谷駅周辺エリアには高さ制限があり、近隣にこれ以上高い建物は建てられない。

 日本初出店のパティスリーやTSUTAYAブックストアの新業態となる有料ラウンジなど213店舗が入る商業施設、コワーキングスペースやイベント会場から成る産業交流施設、オフィス、屋上や高層階を中心に展望施設を備えており、渋谷再開発の目玉となる。

 この新ビルの事業主体である東急、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東京メトロは渋谷駅乗降客の利便性を高めるとともに、商業施設などから多くの稼ぎを得ることになろう。初年度の売り上げは400億円を目標に掲げている。彼らが直接的にメリットを享受していく陰に、別のかたちでメリットを得る存在がある。

 それは、隈研吾建築都市設計事務所、SANAA事務所と共にデザインアーキテクトとして建築デザインを担っているのが設計大手の日建設計だ。

 開発の事業主体ではないので、商業施設等からの事業収入があるわけではないが、同社ではこのプロジェクトが経営に継続的なプラス効果をもたらす。

日建設計の勝矢武之設計部門ダイレクター日建設計の設計部門ダイレクター、勝矢武之氏 Photo by T.M.

 屋上や高層階などの設計を担当した日建設計の設計部門ダイレクター、勝矢武之氏は「渋谷などの実績がきっかけとなり、他の駅や海外での仕事の引き合いが増えてきている」と語る。

 これまで渋谷駅は、鉄道利用者にとって乗り換えで複雑に移動しなければいけない駅という印象が強かった。移動がスムーズで滞在を楽しめる駅に変わるべく、2002年に東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転の決定を端緒に渋谷再開発が始まった。