新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。子どもたちにとっても、これからはオンライン授業が広がるなど学習スタイルが変化し、社会に出るまでに習得すべき能力も、親の時代とはかけ離れて変化していくことが考えられる。そんな変化の激しい現代において「親は子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる人は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、生理学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「コミュニケーションの取り方」から「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「英語」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」も提示し、理屈だけでなく、実際に何をどうしてあげればいいのかということまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋して紹介する(取材協力:株式会社 Curio School 代表取締役、西山恵太氏)

「深い思考ができる子」の親がしている4大習慣Photo by Adobe

身近なもので「好奇心」をくすぐる

 変化の激しいこれからの時代に生きていく子どもたちには、さまざまな場面で問いを掘り下げ、ときどきのニーズに合った新しいものを生み出していく、柔軟な思考力が求められます。

 そこで注目されているのが「デザイン思考」です。この方法は、もともとはデザイナーが使っていた手法を活用したものです。人々の日常を観察する中で自分なりの問いを立て、仮説を考え、仮説をすぐに簡単な試作品に落とし込み、感想や意見を聞きながら改良を重ねていくという、スピーディなものづくりの考え方です。

 デザイン思考が生み出した有名な事例がiPodです。人々がどのように音楽を聴いているかを観察した結果、「すべての音楽をポケットに入れて持ち運ぶ」というコンセプトが生まれ、何度も試作をくりかえして世界的なヒット商品となりました。

 このデザイン思考を子どもたちに体験させるキュリオ・スクールの代表、西山恵太氏は「子どもたちはデザイン思考を体験することによって『答えがないのは当たり前』『答えは自分でつくるんだ』というマインドになっていく」といいます。

 身近なもので好奇心をくすぐり、問いかけるだけで、子どもたちからはたくさんアイデアが出てくるそうです。さまざまなオープン・クエスチョンの問いかけと対話を通じて思考を掘り下げていくことで、自分なりの答えをつくる力が育つのです。

 子どもを「深い思考ができる」ようにするには、親はどうすればいいでしょうか?

【その1】身近なもので「お題」を見つける

 思考を掘り下げるには「お題」が必要です。子ども自身がお題を思いつかない場合は、大人が代わりに考えます。

 コンビニに並んでいるさまざまなペットボトルの形、街で見かける企業のロゴ……近所を散歩しているだけで、いろんなお題が見つかります。

 西山氏によると「なぜ、誰のために、それがつくられたんだろうね」「どういう意味があるんだろうね」などと問いかけるだけで、子どもはどんどん思考を掘り下げていくことができるといいます。

【その2】自分でアイデアを考えさせる

 どうしても子どもは「正解」を知りたがります。ですがそこは、「パパ(ママ)もわからないんだよね。なんでだろうね?」と共感するにとどめます。「他にも方法はない?」などと聞いていくと、自分から調べたり、悩んだりしながら、自分なりのアイデアを考えるようになります。

【その3】アイデアを形にする

 デザイン思考で大事なプロセスは、まずは試しにつくってみることです。思考を掘り下げた結果、見えてきたことをアイデアの入り口にして、自分のロゴマークをつくってみるなど、簡単なお絵かきや工作で、子ども自身のアイデアを形にすると、考える力や想像力が養われます。

【その4】言い換えて確認する

 子どものアイデアや発言がピント外れだなと感じても、否定せずにそのまま受け入れます。子どもは一度否定されると、その後安心して発言できなくなってしまうからです。

 否定する代わりに、「それってこういうことかな?」と、別の表現で言い換えてあげます。「見当違いに見えることでも、子どもにとっては表現力が足りないだけで、本質的なこととつながっている場合がよくある」と西山氏はいいます。

「それは間違っている」「こっちが正しい」と伝えるほうが簡単ですが、言い換えて確認してあげることで、考えを掘り下げさせるだけでなく、語彙や表現を豊かにすることもできます。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)

加藤紀子(かとう・のりこ)
1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレア等、教育分野を中心に「プレジデントFamily」「ReseMom」「NewsPicks」「ダイヤモンド・オンライン」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。