新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。子どもたちにとっても、これからはオンライン授業が広がるなど学習スタイルが変化し、社会に出るまでに習得すべき能力も、親の時代とはかけ離れて変化していくことが考えられる。そんな変化の激しい現代において「親は子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる人は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、生理学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり 』(加藤紀子著)にまとめた。
「コミュニケーションの取り方」から「家での勉強のしかた」「遊び」「習い事」「ほめ方・叱り方」「読書」「英語」「スマホ対策」「ゲーム対策」「食事」「睡眠」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」も提示し、理屈だけでなく、実際に何をどうしてあげればいいのかということまで丁寧に落とし込んでいる。発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめ上げた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋して紹介する。

スキンシップが「愛情ホルモン」を引き出す

「こちょこちょ」は子どもの脳のシナプスを増やすPhoto by Adobe Stock

 スキンシップは子どものストレスを軽減して情緒を安定させ、精神的な自立をうながす成長の土台となります。スキンシップをとると、愛情ホルモンとも呼ばれる「オキシトシン」という脳内物質が分泌されます。

 子どものころにオキシトシンを分泌しやすい脳にしておくと、大人になっても他者への信頼や安心感が続き、周囲の人と温かい人間関係を築くことができるといわれています。

 さらに、記憶力がよくなり、学習効果が高まり、ストレスにも強くなることがわかっています。

「皮膚」への刺激で脳に好影響を与える

 2018年のベルメゾンの調査によると、スキンシップがとれている家庭ではとれていない家庭に比べ、保護者が「家族の絆」を約3倍も深いと感じていることがわかりました。

ところが残念なことに、12歳までの子どもをもつ保護者の約半数が、小学校入学のころから「スキンシップが減っている」と実感しているようです。
桜美林大学の身体心理学者、山口創教授は、子どものころに十分なスキンシップをとっておくと、その効果は一生続くといいます。

 皮膚は「第二の脳」ともいわれており、温かくやさしい刺激が皮膚から脳にダイレクトに届くことで、心身の発達に良い影響を与えてくれるのです。

 子どもと効果的に「スキンシップ」をする方法を紹介します。

子どもが求めてきたら拒まない

 親子のスキンシップが多いほど、子どもは家庭を「安全基地」のように感じることができます。スキンシップを拒まれると子どもは不安を感じてしまうので、拒まず受け入れてあげます。

手をつなぐ

 手は癒しの源です。「手当て」という言葉は、昔の人が病気やケガの患部に手を当てて治していたことに由来するともいわれます。手をつないで歩く、あるいは握手でも、手のぬくもりは人を安心させます。

頭をなでる

「よかったね」「よくがんばったね」などと声をかけるときに頭をなでると、子どもは愛情を感じて、喜びます。思春期に近づくにつれ、親子のスキンシップは減っていきますが、そんな時期でも頭をなでることは触れ合いのよい機会になります。

肩や背中をポンとたたく

 赤ちゃんは背中をポンポンとたたかれると、母親の胎内にいたときの心音を思い出し、落ち着くのだそうです。

 子どもが寝る際には背中にポンポンと静かに手を当ててあげたり、「いってらっしゃい!」「おかえり」といった挨拶のついでに、肩や背中にポンとやさしく触れてあげるだけでも、安心した気持ちになれるようです。

 山口教授は「このワンポイント型のスキンシップで、言葉で伝えるメッセージの何倍もの感情が伝わる」といっています。

ハイタッチする

 ハイタッチは、「イェーイ!」「やったね!」と言いながらお互いが向きあって目を合わせ、言葉以上に喜びや感動を共有できます。

「こちょこちょ」で笑って脳を育てる

 無理強いは禁物ですが、子どもが喜んだり楽しめるようなら、こちょこちょとくすぐり合う遊びにもスキンシップによるリラックス効果があります。また、笑うことで情報を伝達する神経回路「シナプス」を増やし、脳の働きをよくします

ハグする

 武蔵野学院大学の認知神経学者、澤口俊之教授によると、子どもによくハグをする親子はお互いの関係性がよく、親子ともよく眠れるなど、心身ともに健やかになるそうです。
また、親からハグをされてきた親の93.7%が自分の子どもへもハグをしており、育児スタイルは親から子へと受け継がれているようだと指摘しています。

効果が高いのは夕方以降

 副交感神経は「休息の神経」ともいわれ、体をリラックスさせる働きをもつ神経です。桜美林大学の山口教授は、スキンシップを副交感神経が優位になる夕方以降に行なうと、さらに効果が高まるといいます。

 また、秒速5センチメートル程度の速さで動かしながら触れると、副交感神経が最も優位になるそうです。私たちが大切な人やペットなどをなでるとき、無意識のうちにこの速さで手を動かしていることが多いようです。手のひら全体を使ってしっかりと触れると効果的だと山口教授は勧めています。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』からの抜粋です)

関連記事:コロナ時代「学力遅れ」より親が心配すべき1つのこと

参考文献

畑山望「親子のスキンシップ減は7歳から? 約半数『スキンシップクライシス』に」(リセマム、2018/12/14)
山口創『皮膚は「心」を持っていた!』(青春新書 INTELLIGENCE)
山口創『子供の「脳」は肌にある』(光文社新書)

「〈親子間のハグの実態について調査〉ハグの頻度が高いほど、ココロとカラダが健やかに育つ結果に」(アサヒ飲料株式会社、2018/8/9)