「なぜ、日本ではユニコーン企業がなかなか出ないのか?」――。
この疑問への1つの回答となるのが田所雅之氏の最新刊『起業大全』(7/30発売、ダイヤモンド社)だ。ユニコーンとは、単に時価総額が高い未上場スタートアップではなく、「産業を生み出し、明日の世界を想像する担い手」となる企業のことだ。スタートアップが成功してユニコーンになるためには、経営陣が全ての鍵を握っている。事業をさらに大きくするためには、「起業家」から「事業家」へと、自らを進化させる必要がある、というのが田所氏が本の中に込めたメッセージだ。本連載では、「起業家」から「事業家」へとレベルアップするために必要な視座や能力、スキルなどについて解説していく。

クラウドワークスは、<br />サービス開始後3年という短期間で、<br />なぜ、上場できたのか?Photo: Adobe Stock

限定された市場から、
プラットフォームを展開して徐々に広げていく

 前回も説明したが、下の図表を見てほしい。「限定された市場から、プラットフォームを展開して徐々に広げていく」というパターンがある。これは限定された市場で始めて、そこでPMF(トランザクションのティッピングポイント超え、ユーザーのリテンション率の向上)を達成できたら、ターゲットとする市場セグメントを広げていくというものだ。クラウドワークスやメルカリなどは、このプロセスを経てスケールした。

 具体例として、サービスローンチ後、3年足らずで上場を果たしたクラウドワークスについて見ていこう。日本国内にフリーランサーと呼ばれる人はおそらく数百万人いて、発注する企業も400万社ある。この両者をマッチングするビジネスではどうすれば成功できるのか?

 何も考えずに、ただ全方位的にやってもPMFするのは非常に難しいだろう。なぜなら、マッチング率が非常に低くなり、ニワトリとタマゴのジレンマに陥ってしまうからだ。