近年、日本でも評価額10億ドル以上の未上場企業を指す「ユニコーン」という言葉を目にする機会が増えてきました。ユニコーン企業数の増加は、政策目標としても掲げられていますが、ユニコーンを増やすこと自体が目的化してしまうと、思わぬ副作用を招きかねません。ユニコーンを増やすという目標設定の是非について考えます。

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ユニコーンは誰にでもつくれる

朝倉祐介(シニフィアン共同代表。以下、朝倉):昨今、経済紙などで「ユニコーン」という単語を目にする機会が急速に増えてきました。「ユニコーン企業」という単語は、米国のVCであるアイリーン・リー氏が発案した言葉で、時価総額が10億ドル以上の未上場スタートアップのことです。「評価額10億ドル以上」、「未上場」、「創業10年以内」、「テクノロジー企業」といった4つの条件を兼ね備えた企業がユニコーン企業と定義されています。

10億ドルなので、日本円だと正確には1100円程度なのでしょうが、ざっくり評価額1000億円以上の未上場企業のことを、日本では「ユニコーン」と呼ぶのではないでしょうか。今回は「ユニコーンの増加を目指す」という目標設定の是非について考えてみましょう。

小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):政策関係者やVC、もちろん起業家自身も、ユニコーンであるかどうかをかなりの程度、意識していますよね。経済産業省が主体となって運営している「J-Startup」プログラムでは、2023年までに日本発のユニコーン企業を20社まで増やすことが目標として掲げられていますが、未上場企業に限らず、上場企業も支援の対象としています。

もともとの言葉としては未上場であることが条件とされていますが、日本ではかなり広い意味で使われているように思います。

朝倉:この点、そもそもユニコーンを定義する際に、未上場企業と限定する必要があるのかは疑問ですよね。VCからの資金調達もIPOも、あくまで資金調達の一環と考えると、上場企業か未上場企業かは関係ないように思います。

村上誠典(シニフィアン共同代表。以下、村上):ユニコーンを、会社の持続的成長を通じて社会に大きな影響を及ぼしうる企業、と捉えるのだとしたら、上場か未上場かは関係ないはずですよね。

ただ、上場/未上場では、バリュエーションを行なった投資家の母数が大きく異なる点は留意すべきでしょう。上場企業の時価総額は、多数の投資家の評価が反映されます。一方で、未上場企業の評価額1000億円は、極端なことを言うと、1人でもその企業を1000億円と評価すれば実現することになります。

朝倉:例えば、1億円で0.1%相当の新株を引き受ける投資家がいれば、理屈上はそれだけで評価額1000億円ということになる。極端なことを言えば、1000万円で0.01%、100万円で0.001%でも同様です。ユニコーンは、その気になれば誰にでもつくることができるわけですね。