時代や環境変化の荒波を乗り越え、永続する強い会社を築くためには、どうすればいいのか? 会社を良くするのも、ダメにするのも、それは経営トップのあり方にかかっている――。
前著『戦略参謀の仕事』で経営トップへの登竜門として参謀役になることを説いた事業再生請負人が、初めて経営トップに向けて書いた骨太の経営論『経営トップの仕事』がダイヤモンド社から発売。好評につき発売6日で大増刷が決定! 日本経済新聞の書評欄(3月27日付)でも紹介され大反響! 本連載では、同書の中から抜粋して、そのエッセンスをわかりやすくお届けします。好評連載のバックナンバーはこちらからどうぞ。

なぜ、ウォルマートは、<br />IT部門をアウトソーシングせず<br />内製化するのか?Photo: Adobe Stock

3週間分の工数に相当する金額の仕事が、
たった2日で終わる…

 アウトソーシングという言葉が、2000年前後に流行りました。

 会計処理、コールセンターなど、社内に専門部隊を抱えるよりも、業務の品質が保たれ、かつ人件費を変動費化できると多くの企業がこのトレンドに乗りました。

 このトレンドに乗じて、とくに小売業を中心に多くの日本企業は、社内のシステム部門も軽くしてベンダーに大きく頼る方向に舵を切りました。

 ところがその結果、システムのメンテナンスだけではなく、修正作業まですべて、ベンダーに依存せざるをえない状態になっていきました。この流れによりIT業務について年間の総費用や修正、レベルアップのスピードや機動性が本当によくなったのかについては、疑問の残るところです。

 費用面で捉えた場合に、かなりの年間費用を固定的に支払うか、あるいは都度の修正費用を見積もって支払うか、どちらかの形をとることになります。

 私が豊田自動織機に勤めている時の話です。ITベンダーにシステムのごく小さな修整を依頼した際に、見積もりが当時のシステムエンジニア(SE)の3週間分ほどの工数に相当する金額で上がってきました。

 修正するボリュームに比べて見積もり工数が明らかに多いために、ベンダー側のSEの責任者に確認したところ、「コード(プログラム)を解読して作業します。何があるかはわかりませんので、安全を見なければなりません」と答えられました。

 社内のSEの対応範囲外でもあり、急を要することもあって上長からの指示で発注をしたところ、発注後の3日目の朝に「出来上がっていますから、動作チェックをしてください」と正直に告げられて唖然としたことがあります。

 また、固定費化すると本来は割安になるべきところを多くの場合、先の例のように人材を多めに割当てられて割高なものになりがちです。

 そもそもの視点で考えれば、企業の競争力の根幹は、その会社の業務の進化が速さ、質、コストの面でいかに精度高く行われるかで決まります。